バーチャルネットゴーグルの使用の際には、1日2時間を限度として下さい。なお、改造などは一切しないで下さい。
田島と泉は現時刻を表示させた。インターネットの時間だと、12時半。もう既に2時間半はバットを振ったりボール投げたり、花井にメールを送ったり。と遊んで……いやいや、仕事している。
バーチャルネットゴーグルの改造は入荷してその日のうちに行った。色々「邪魔」なリミッターを外し、他ではできない「どこでも移動」を可能とした。リンクがない所にジャンプが出来る。とか、自由な時にウイルス(としか他人には言いようがない)メールを送るとかサーバーをちょっと覗ける。とか。
人はそれを「ちょっと違法じゃない?」と言う。ちょっとどころではなく、確実に違法なのも存在するのだが。そんなことはお構いなしに、田島と泉はボールを追っかける。
…なんか、今回は非常に不可思議な動きをしている。かなり特殊な回線を使用しているらしい。
「田島…ここ、A病院内のサーバーん中……」
泉が現住所を確認してぎょっとする。完全に違法である。
「いや、ほれ、見てみろ!」
複数のパソコンとサーバーが赤くなっている。ウイルスに感染している証拠。それが赤い線を出して、情報を今まさに吸い上げているのだ。…典型的なハッキング、しかもその最中。
「栄口の今日の予定、知ってるか?」
その赤い線を解読し、ある程度の情報を手に入れながら田島がたずねる。
「出かけるって言ってた。」
泉もその手伝いをしながら答える。
「ならまた花井?」
「電話使うか?これ緊急事態じゃねぇか?」
ふと見ると、バットもボールも消えている。どうやらその主は役割は終えたと回線を切ったらしい。
「そだな。泉、よろしく。」
「へーへー。」
右手を挙げると、今は懐かし黒電話の受話器。ぐるぐるとしたコードはどこかに消えている。50カ所近い偽装場所とプロキシを付けたり外したり、沢山つけてみたり…と色々やっている上に常に変えているので泉以外には誰も分からない。…とりあえず、出先は花井だけど。
「もしもーし。花井?今、A病院のサーバの中。で、今、感染されたパソコンとサーバから次々とデータが奪われてるの確認中。オレらにマーク付けて、相手を追うから。何分で出来る?」
ややあって泉はムッとした顔で言い放つ。
「5分!」
値切りのオバちゃんを彷彿とさせるそれは、十数秒後の「8分後」で決着がついた。
「田島、一度出るぞ。」
ハッキングを行っている相手を追いかけるには、リアルタイムに追いかける為、自分の姿にマークを付けて貰わないと、刑事告発などが出来ないのだ。その作業に入るには、一度こっそり入ったサーバから抜け、指示された場所から入らないといけない。
ジリリリリリリリリ…!
泉の尻あたりから音が鳴る。
「もしもしー。あ、阿部。」
瞬間、泉の全身が緑、田島は黄色に光り出す。
「ああ……ああ。分かった。田島、セキュリティ管理者がさっさとポート開けてくれたって。入るぞ!」
「さっさとポートごり押しして開けさせたの間違いじゃねー?」
「そうとも言うな。」
笑いながら、緑色と黄色の光はインターネットを走り出す。