それぞれどんぶり2杯を胃袋に入れ、「ごちそうさまでした。」と両手をあわせると、もう出勤の時間。
「泉!」
 田島が8時のニュースを見終わって、ほえほえと三橋と話している泉をせかす。毎朝8時15分の連続テレビ小説のオープニングが終わるまでに自転車に乗らないと遅刻。いつもながらのキワキワラインでの行動。
「…え、もうそんな時間?行ってくるな。三橋!」
「いってきまーす!」
「行って らっしゃ い。」

 ほえほえ、と三橋は答える。ブレーキを解除して、二人の後を追う。すなわち玄関。

 三橋が玄関に出るころには、二人はすでに自転車に跨っている。
「じゃーなー三橋!」
「夕食楽しみにしてる!」
「う うん!」
 三人で手を振り合って、とりあえず三橋とはお別れ。
「今日は何かあると思うか?」
 自転車をこぎながら田島が問う。
「ないほうが周囲にゃいいんだろーけどな。」
 泉が苦笑する。路地を曲がる。
 アパートから会社まで、バスだと30分。徒歩だと40分。だけど、自転車を使うと15分まで短縮が出来る。げに有り難き、路地裏近道コースである。
「今日の晩ご飯、何だろ。」
 ニシシ、と田島が笑う。
「朝食食べたばっかなのに、もう夕食の心配かよ!」
 泉が呆れ顔で見やる。
「いーじゃんか。三橋が作る料理、何でも美味いんだから!」
「それは否定しない。」
 ダベりながらも息が上がらないのは、もうえんえんとこの道を通い続けたから。ゆっくりと目的地の会社が見えてくる。地上40階建てのオフィス・ビル。
「入館証…っと。」
 キキッと自転車置き場に停め、リュックの中からそれぞれ入館証を取り出すと、駆け込んでくる他の会社員と一緒に入っていく。
「さーて、今日も一日遊べますよーに!」
 田島の言葉に、泉も頷いた。