「だからなんだかヘンなんだって!」
 会社では田島が力説していた。
 ネットワークを人間くさく、動物的勘で乗りきってきている彼だが、いかんせん。
「田島。いい加減主語入れろ。」
 阿部の言葉にう、と呻く。今度はオレの番かと泉が口を開く。
「表で動くにもアンダーで動くにも、常にウイルスには警戒しねぇと駄目だろ?」
 会議室にいた花井、阿部、栄口、巣山が同時に頷く。
「新種かわからねぇけど、うようよいやがる。いつもの数十倍だ。」
 ひゅっ、と花井が息を飲んだ。
「オレと泉が逃げ回ってわかっただけでも5種類。」
 手のひらをぱーにして田島が言う。
「目の前で他の会社のヤツが知らないウイルスにやられてた。」
 これには増して泉が怒った口調で言う。同業者であれ、目の前でウイルスに侵されていく者は見たくない。バーチャルネットゴーグルはネット内の動きを自由にするかわりにウイルスを受けた場合、そのショックはそのまま脳を直撃する。ただの気絶のみですめば良いが、場合によると障害が起きる場合がある。その為、普通のユーザーは購入と同時に信用のおけるアンチウイルスのソフトを身に常駐させるのだ。田島たちは重いのが嫌な上にかわしかたを知っているので重いそれはランニング程度の軽さになっている。それでも重いと日々泉と研究しているのだ。
 そんな事をして観察をして……何度見ても嫌なものはあるのだ。
「今、どのタイプか検索中だけど、まだ時間がかかる。」
「発生源は突き止められないのか?」
 泉の言葉に巣山が尋ねを入れる。それには田島が「今のところ多すぎてわかんねー。」と答えた。
「じゃあこの件はモモカンかシガポに報告…」
『しない。』
 栄口の言葉には二人が同時に返す。
「あと少しで解析できるヤツあんだよな!」
「表に持ってくるのはヤバいから二人で解析してる。」
「一週間。」
 阿部が人差し指をぴっと立てる。
「それ以上かかるならモモカンとシガポに報告。」
 その言葉にははぁとため息をつきながら、二人はしぶしぶ承諾した。
「じゃ、今回はこのくらいで。」
 栄口の言葉にめいめいが諾の声をあげ、席を立った。



 ここんとこ、バットとボールの、きてねぇな。
 解析用プログラムを乗せているので、いつもよりかは遅いものの、二人であーでもねーこーでもねーと 騒いだ結果、平均コンマ05まで伸ばすことに成功した。解析プログラムをなくなしたら、更に速くできんな。と田島がうんうんと頷く。
「このウイルスどものせいじゃね?」
 泉が近くにいた、解析済みのウイルスをべしっとはたく。瞬時に消えるのは強力な削除プログラムを右手に着けているからだ。
「あっちかたも忙しいのかもな!」
 お、いた。とネットワーク上で現在幅をきかせているウイルスをばさっと防御壁で作った袋に入れる。二人は手を繋ぎ、並列処理を行う。
「こりゃ、花井と阿部が泣きわめき怒鳴るな。」
 解析終了。袋の中には何もいない。予め用意した数百本の対ウイルスプログラムを近くに常駐させ、一気に検索をかけ、それに近いプログラムを見つけ出して、その場で簡単なプログラムを作り出したのだ。簡単なプログラムなので完全に削除してしまったが、次にこの種類のウイルスにあった時には、花井の所に持ち帰られるだろう。
 花井か栄口にあいているパソコンがあるかどうかきこうとした時、緊急事態を告げる通信が入る。一度阿部が作っているのを使ったことがあるが、それ以来だ。
 二人は頷きあうと、一気に元の世界へと戻っていった。

 バーチャルネットゴーグルを外し、やれやれどーした一体とぶちぶち言ってる二人のもとにやってきたのは、血相を変えた仲間たちと、モモカンだった。
「え?なんで?」
 ネットに入っていた時間が短かったものの、血流がまだ少し悪い。巣山、西広、沖、花井が手分けしてすぐに動けるよう筋肉と血流をほぐしている。自分たちも驚いたが、他の全員のほうが焦っているようで、いつもの(花井はいつも胃が痛そうな顔をしている)のんびりした表情ではない。
「なーなー、花井、何あったんだ?」
 よしおわり。と西広が言って、全員が手を離す。
「この状態であることは私が許します。泉君、田島君、すぐにアパートに帰るように。」
「なんでですか?」
 田島が敬語を使う数少ない相手であるモモカンに問う。モモカンはさっさと行く!と自転車の鍵を二人に渡しながら言った。

「あなたたちのアパート、燃えてるわよ!」

 一気に我に返り、二人してダッシュで走り出した。
「何か必要なら電話入れろ!」
 そう 言った阿部に二人ともキャラ違う!と思いながら走る。