ここのところ、「仕事」が詰まり、田島たちを見送ると、すぐにベッドに逆戻りという生活が続いていた。
「三橋!」
 凄まじい音とともに浜田が入ってきた時も、やはりまだ夢うつつで、「燃えてる!」という言葉にも、誰かのブログ?とぼけぼけした思考しか回っていなかった。
「逃げるぞ!」
 だから、布団を剥がされ車椅子に乗せられた時、漸く大事なことに気づく。
「ハマちゃん。段 ボール…」
 部屋の端に置いてある少し大きめな段ボールを指差す。そして車椅子の後ろにあるはずのノートパソコンを一度取り出して確認。しまうと自分で車椅子を押そうとして、その合成樹脂の部分と金属部分が熱くなっていることに、燃えてるのはブログではなく、このアパートであることに漸く頭のスピードが追い付いてきた。
「三橋!」
「大丈夫か?」
 その時、朝聞いた声が鼓膜を揺らす。
「たじ まくん。いずみ くん…」
「オレらの部屋は火が回りすぎたから放棄した。」
「浜田!荷物は?」
「最低必要なのはこの段ボール…」
「貸せ!」
「うぉ!」
 泉が段ボールをぶんどるのと、軍手をした田島が三橋の車椅子の取っ手部分に手をかける。
「浜田!あと必要そうなの出せ!」
「…いや、全員撤退!火が回ってきやがった!」
 既に玄関近くに車椅子と三橋、そして外出用の車椅子を引きずり出した田島が焦りと熱で赤い顔になりながら「急げ!」と怒鳴っている。
「こけるなよ!浜田。」
「そっちこそ!」


一気に全員が外に出る。

瞬間。

 
二階からあがっていた火が、轟音をたてて、一階部分に落ち、更なる業火と爆発を引き起こした。

 四人は、ただ呆然と、漸く到着した消防士たちに下がるよう言われるまで。

 呆然と、見ていた。