フィールドを作り終えるまでの制限時間は15分!と花井が宣言。一部を除く何人かがブーイング。
「やろうと思えば出来るって…ほいっ!」
田島が早速作り上げる時間としては1分かかっていない。三橋も同様だし、泉も、である。やや遅れて阿部、花井、巣山、栄口、ぎゃーぎゃー言いながらも水谷も作り上げる。沖は三橋の所に向かい、教えてもらっている。西広はもぞもぞ作り上げ…
「西広!ちょっと違う!」
阿部にだめ押しを食らった!
「あまりこういう事しないから苦手なんだよ。」と苦笑まじりに言うと阿部が仕方ない、とプログラムを西広に押し付けた。
「上で世話になっているからな。」
照れ臭そうに無愛想に言う阿部に、西広も「ありがとう。」と答えるしかなかった。その言葉に更に無愛想に照れていた阿部であった。
あと7分くらいか?という時に、花井が田島の尻を蹴っ飛ばしていた。ろくでもないトラップを仕掛けていたようだ。泉も栄口に小言を言われている。全くあの二人は…と思ってはっとする。三橋は?三橋はどんなトラップを仕掛けているんだ?
巣山は不安になって、三橋の割り当て場所に向かって、着いて…
「……!」
コケた。立ち上がろうとしても立ち上がれない。
「なんだこの…」
「なーにやってんだすやっ…」
ま、の所で水谷もコケた。顔面から。あれは痛そうだ。
「摩擦係数を低くして…」
コロコロ転がる。巣山と水谷を見た者たちがなんだなんだとやって来てはコロコロ転がる。始まる前から立ち上がっているのは三橋と田島と泉だけだった。
「…低くしす…ぎた?」
『しすぎだ!』
立ち上がれない者たちが一斉に怒鳴る。
「そか?分かればおもろいトラップなんに。」
つつーっとスケートを始めた泉と田島に浮遊している0と1を集めてにわかゴミを作ると投げ出す。
「お!そうくる?」
「田島!あれはきん…」
泉の言葉は遅かった。
転んでいる者全員に巨大なゴミが降ったのは5秒後のこと。
怒号。罵声。泣き声等々。ゴミも人もつるつる滑る。性質を理解して即時に自分用にプログラムを作らないと滑る
。滑りまくる。そしてゴミに当たる。地味に痛い。
開始時間が15分延期されたことを付記しておく。一応…。
引っ掛かった全員が立ち上がり、三橋を軽く怒り(田島レベルで怒らないのは実体がなくなるまで泣いて落ち込む為)、普通の土台を三橋が30秒で作り上げた。こういう作業は早いのな。と花井がぼやく。
まあ、何はともあれ舞台は整った。全員がそれぞれの位置につき、モモカンのカウントを待つ。
「じゃあ、最終戦、始めるわよ。10、9、8…」
落ち着け心臓、と沖は願った。
「…6、5、4…」
さあ!いくぞ!と栄口が奮い立った。
「3、2、1…」
ゼロ!とモモカンが言う。
瞬間に一部の場所が靄に包まれる。
「あ、三橋、ずっこい!」
田島が向かっていた先が靄に覆い隠されていくのを無理に強硬突破!近くに泉の気配…阿部、花井の気配。やはり三橋とは一度やってみたかったんだ。と、へぇ。と一言呟くと、近くにいた水谷に仕掛けを施してから襲いかかる!
「やっぱり田島ー?」
「あとから泉からでも奪い取れ!」
水谷のマーカーを奪い、さっと逃げる。水谷に施した仕掛けは発動してるはず。
「なんで目の前に泉ー!」
「お前のゴムもどき、田島が仕掛けていったから。」
楽しそーに笑いながら、泉は水谷に回答する。簡単なねたばらしだ。
「おまえらひきょーもーん!」
マーカーを奪われ、靄に取り残される水谷。
「よーし。これで…どうよ!」
床が一気に隆起、陥没を始める。直すのは簡単だが、急に行うのは難しいだろう。
「敗者の園で待ってるぞバカヤ…」
ローと言う前に水谷、脱落。最初の脱落者になった。
霧に陥没、隆起…
「あそこで何人のびてるんだろう。」
沖は呟く。西広も困った顔をしている。
巣山が急遽作り上げたマーカー持っている者マップを見ると…
「田島、泉、花井、阿部…」
「水谷さっき落ちたね。」
と三人の会話に栄口が入ってきた。ぎょっとしている彼らに「水谷が残り10秒で何やるか何となく想像できたから退避してきた」と説明。ちなみにここは沖のエリア。三橋の場所からかなり離れている。
「で、三人揃ってマーカー待ち?」
「うーん。戦況がどうなるかわからないから。」
「とりあえず同盟。」
「うん。」
栄口の問いに巣山、西広、沖の順番に答える。
「…なら。」
ふらり、と栄口の姿がぶれる。と。
「あ!マーカー!」
三人のマーカーは栄口の手の中に入っていた。
「提供、感謝。」
ぺこり。とお辞儀をして、空中にわざわざm(__)mなんて顔文字残して栄口は姿を消した。呆然とする三人に風が走る。
「へ?」
「はい?」
「えっ?」
これまたご丁寧に栄口の絵文字に上書きして、風は消え去った。マップを見ると…
「み…」
「三橋…」
「三橋かぁ…」
三人は頷き合い、空中にプログラムを実行する文を打ち、発動させる。摩擦係数を下げるのではなく、がんがんにあげるもの。
三人のエリアでしか発動しないが、それでも範囲は広いだろう。
「誰か三橋に勝てー!」
「栄口にもー!」
「同じくー!」
やけくそで叫んだ巣山の言葉に、沖、西広が続いた。
「ま、栄口はすぐに水谷やオレらと会える。」
うん。と頷き、三人揃って消えた。
巣山、西広、沖、脱落。
三橋は煙幕をはると同時に違うエリアに逃れていた。煙幕側にアバターを残しておき、擬似マーカーを付けておいた。双方共にらしくなく雑な作り方をしたので、すぐにばれるだろう。だが、目眩ましにするには充分な時間でもあった。
何にもない空中に指を押すと、ひょい、とマップが出てきた。先ほど頂戴した三人よりも精密なそれは、山あり谷ありな自分のエリアがどのようになっているか詳細に教えてくれる。
あの中で田島と阿部が戦闘している。泉はあと数秒で栄口と合う。花井は…
三橋はマップを消すと、異様な速さで走る。花井はどうやら陥没地帯に足を滑らせ少し危険な状態になっているようだ。
それから間もなく、やはり倒れている花井を発見した。 この世界のダメージは直接脳へのダメージだ。
三橋は手早くスキャンを施し、脳に異常が無いことを確認して花井に覚醒を促す信号を送った。
「う…」
「花井く ん。大丈夫?」
今の自分の状況が分からない花井は少しぼーっとしていたが、はっと気付いて身を起こす。
「一応、脳に、は、異常がな いけど…」
「そうだな。水谷にやられるとは情けねぇけどな。」
苦笑する花井だが、モモカンにもとの仕事に差し支えが出てくるとの三橋の判断で、離脱する事を宣言する。 モモカンもそれを承諾。10秒後に回線を切断するように告げてくる。
それに了解しながら、花井は二つのマーカーを三橋に渡した。
「お前がいてくれて良かった。感謝する。」
真顔で言ったら…三橋はシューポッポと顔を赤くして盛大に照れていた。
「い、一応、び病院へ…」
「ああ、わかった。でもオレも一応…」
花井の姿が消える。
「お礼…言われ た!」
ウヒ、と喜んだとき。
アラートが鳴った。