あの喫茶店に行ってから、2週間が過ぎようとしていた。
「あ、こいつDizzyじゃね?」
ニュースで東京湾に死体が浮き、その身元が判明したとのニュースに、田島が反応した。
「横山……うん。確かにこいつ。」
泉も反応する。情報を提供したりされたり、1.2度チームを組んでハッキングして遊んだり。そんな仲だった。まぁ、ネット上での軽いつきあいというヤツか。
「何かやっちまったんかなぁ。」
食後のお茶をがぶがぶ飲みながら田島と泉がテレビを見ている。三橋は……顔面蒼白でガタガタ震えていた。
「あ、悪ィ。食事中にこんな話するもんじゃねーな。」
泉が三橋の様子にいち早く気づき謝る。田島も同様に「ごめんな。」と謝る。
「う……うん。だいじょう ぶ。だ よ。」
三橋もなんとか持ち直しながら泉らの謝罪の言葉を受けている。
「おーい、お前らそろそろ仕事場行かなくていいのかよ。」
台所で何かしていた浜田がにゅっと顔を出す。慌ててテレビを見ると、いつもならでかける時に現れるお天気おねーさんが、既に各地の天気予報まで話している。連続テレビ小説はあっけない結末をみせて終わってしまったが為、何となく次の話に手がでないので、自然朝のニュース番組へとシフトしてしまったのだ。
「うわやっべ!ごちそうさま!」
「ごちそうさま!行くぞ田島!」
「おぅ。今日新人が入ってくるんだ!」
「もと同業者、な。」
わいのわいのと三橋に告げて、やかましく二人は出社していく。その姿を車椅子に座ったまま見送って…残った朝食を平らげる。
「そっちの準備はどうだ?」
食後のお茶を渡しながら、浜田が椅子に腰掛けつつ尋ねる。
「平気 だ よ。」
ふーふーと息を吹きかけてから、少しずつ飲んでいく。氷がひとかけら入っていても、熱いものは熱い。ちょっと猫舌な舌にはこの熱さは少しきつい。
「いつ実行?」
浜田の視線は、新聞の、先ほど田島と泉が言っていたDizzyの死亡記事のところであった。
「こ 今週 中。」
三橋はやせ衰えた足の股に湯飲みを置くと、台所まで動こうとストッパーを外した。その所で浜田に湯飲みをひょいと取られてしまった。
「三橋、こっちの仕事はオレがやっから。お前は少し休んでおけ。顔色悪いぞ。」
湯飲みをテーブルに置いて、浜田は三橋のベッドまで車椅子を動かす。彼にしては珍しく大人しくそれに従う。ここの所、ずっと昼夜関係なく準備をしていたのだ。疲れて当然だ。起き出して、上半身フラフラになりながら朝食を作り出そうとしてた時に浜田が駆けつけたのだ。
「戸津川警部の時間になったら起こすから。」
うん。とそれには真剣な表情で三橋は頷いた。BSの午後からやっている推理は出かけない限り欠かさず見ている三橋である。浜田もそれを熟知していて、その時間帯には電話はかけないようにしている。彼の平日の楽しみを奪っては悪いから。
「んじゃ、三橋、いったんお休み。」
「おや す ………」
最後の所は寝息になっていた。余程疲れていたのだろう。彼は「仕事」を始めると全てを忘れて没頭してしまう癖がある。泉や田島のおかげで定時に起きる癖はついたのだが………
「片づけるか。」
車椅子を三橋がもし使うとしたらベッドから移動しやすい所に移動し、ブレーキをしっかりとしめる。 タイヤをぐにぐに押して、空気が入っているか確認。パンパンだと逆に跳ねるし、入っていないと地面の感触が乗っている者に直にいくらしい。微調整も難しいものなのだ。
「おやすみ、三橋。」
言って、浜田は台所へと向かった。