ちょっとした趣味と、部屋の掃除、送られてきた請求書の帳簿付けなどごそごそとやっていると、再びドアが開く音。
「よ。三橋。」
 ご近所に住んでいる(らしい)、ヘルパーの浜田である。
「お はよ う!ハマ ちゃん。」
 三橋もすかさず車椅子を動かして浜田の近くまでやってくる。
「今日は天気がいいから、スーパーまで押していくぜ。」
 買いだし、2階部分の掃除などは浜田に頼んでいるので、その言葉は有り難かった。
「きょ うは、ハンバーグ!」
「おお。じゃあ色々買わないとな。」
 上着を三橋に着せかけ、マフラーをし、手袋を渡すと「よっ」と三橋の腰から下に毛布を巻き付ける。
「風呂は?」
「入った よ!」
 もう何年もこの生活をしているのだ。一人で出来ることは殆ど全てやっている。時間と手間と手順をきちんと踏めば、大抵のことは出来る。
「そか。じゃ、出発!」
「よろしく お ねがい、し ます。」
 三橋はよいしょ、とノートパソコンの入ったカバンと買い物袋を持つ…あと財布と携帯。
「それだけあればどうにかなるんだもんな。ホント。」
 浜田が苦笑まじりに言うと薄茶色の髪の下から「ウヒッ」という笑い声が返ってきた。
「じゃあ、小さいスーパーよりも久々にでっかい店に行くか。」
 え、いいの?という表情で浜田のほうを向く。
「え…あ?」
 言葉にはなってないけど。
「いーのいーの。冬物見たほうがいいだろ?」
 今年の冬は確かに厳しそうだ。三橋もそれには頷く。
「じゃ、人の少ないこの時間帯が一番、っつーことで。」
 浜田と、三橋を乗せた車椅子がゆっくりと動き出す。


 駅まで、ゆっくりと歩いて20分。アパートの立地条件としては悪くはない。大抵、三橋のアパートを選んだ人間の決め手は「そこ」である。あと近くにスーパー、コンビニはあるか等。彼のアパートは双方ともに兼ね備えていた。8室あるアパートは常に満室。泉と田島がギリギリで滑り込めたのはまさに奇跡だ。
 三橋は浜田に頼んで切符を買ってきてもらい、駅員がいる改札口へ回る。浜田はそのまま無人改札へ。
「一人で大丈夫ですか?」との問いには改札機ごしに「オレがいるんで。」と浜田が答えた。
 エレベーターを使い、ホームに降り、電車に乗る。電車の中は閑散としていて三橋としては気分が楽だった。じろじろ見られる事もない。遠慮無く子供とか一部の女子とかは指さして話題にするのだ。
「大丈夫か?」
 浜田も心配したのだろう、尋ねてくる。
「だいじょうぶ だ よ。」
 軽く会話をしている間に、電車は目的の駅へと到着。
「はいはい、どいてくださいねー。」
 浜田が三橋の車椅子を押しながら、ホームへと出る。
 目指す先は…すぐそこのエレベーター。
「さー、今日は買い物するぞ!」
「う ん!」
 朝一番にセットしてきたのがちゃんと出来てるかな?とか思いながらも三橋は買い物に意識を取られていった。