「あ、今日はジャージだ。」
田島と泉と共にやってきた三橋を見て、沖はぽそっと巣山に言った。
「今日は投げるのかね?」
「さぁ? …はないー!」
その3人の後ろから走り追いつき、何やら話していた花井が3人から離れたところで巣山が呼んだ。「こいこい」と手を振
りながら。それを見て、花井は小走りでやってくる。
「なんだ?」
「今日、あいつ、投げるのか?」
「ああ、投げるって。」
げ、じゃあ今日阿部と?と沖は顔がサーッと青くなる。
阿部はあいつを見てから変わった。と沖は思っていた。
諦め半分に球を受けていたのがギラギラとしているのだ。ベンチに座っているあいつをちらっと見て、こっちに結構無理な
要求をしてきたりする。
同じ投手である花井にもそれは尋ねたかったが、今のところやめている。花井は投手でもあるがキャプテンだ。あまり負担
をかけさせたくない。思い違いかもしれないし。
「花井、なんかここんとこ、阿部、妙なんだけど?」
隣の巣山が自分の心を読んだかのように花井に問うた。うわーうわーうわーっ
「確かに、なぁ…?」
オ レ に 視 線 を 向 け な い で 下 さ い 。
「た…た、確かに。」
沖はそれだけをようやくの気持ちで言った。
「まぁ、あの「三橋」のせいだろうけど。」
花井はあっけらかんとした口調で言う。
「あいつ、沸点低いから、すぐ怒鳴るだろ。そうするとすぐに三橋は逃げちまうんだ。田島と泉と栄口がそのバリケードになっているからストレスギンギンってところか。」
はぁ。と花井はため息をつく。キャプも大変だ。
「あいつのストレス発散させるにはあの「三橋」の球を受けさせてやればいいんじゃないのか?」
巣山が問う。だが花井は首を振った。
「最初が最初だったから。「三橋」が滅茶苦茶脅えるんだ。しかもあいつ、オレらの投球練習の最中にたまに「三橋」を見て
たりして、それでまた「三橋」はビビッて…。」
はぁ。
「お疲れ様…。」
「ご苦労様…。」
沖と巣山はぼそぼそっと言った。
その時である。突然わぁぁっと声があがった。3人ともその方向を向く。そして走り出す。
田島が。
田島が腹を押さえて倒れていた。