クラスへと顔を出すのは、恐怖に近かった。何よりも視線の集中をあびるのが怖かった。
 違う階へと行ってみたりして、時間をつぶしてから、少しギリギリかな?という時間になって、教室へと入った。
 いつもと変わらないクラスの人たちのおしゃべり、ガタゴトと机や椅子の動く音。拍子抜けしたてらいもあったが、三橋は落ち着いた気分でリュックを机の横へとかける。
「三橋。」

 ドキッ

 この時間に話しかけてくる者など誰もいないのに…

 どしよか どしよか

「みはし、おーい。みーはし。」
 …あれ?この声…
 振り向くと昨日見た顔。
「は…ハマちゃん……。」
 まだ少しドキドキしている心を落ち着けて浜田を見る。
「一週間ぶりだよな。全教科、コピーとっといたから。」
 と、ばさっと三橋に手渡す。…そして…
「お前、凄くキョドるしオドオドするから…オレが代表して謝る。」

 何がどうなっているの?

 何でハマちゃん、頭下げているの?

「盗難事件、お前を疑って悪かった。すまん。」
 三橋は気づかなかったが、その時、クラスの視線はこの二人(特に三橋)に注がれていた。
「言い訳する訳ではないけどさ、オレ、その時足をくじいて保健室行っていた。あいつらは前々から注意してたんだが…。クラス委員だからって意味でもなくて、ふがいなくて、ごめんな。三橋。」
「ハマちゃん……。」

 謝らなくていいよ。

 そんなこと、もう、どうでもいいよ。

 言いたいが、口に出せない。あ…う……とかの声になってしまう。そして最後は涙として出てしまうのだ。でも…


 でも………


「だ…」
 動け、口!動いて…
「だいじょ… だいじょう ぶ だ よ。」

 言えた。

「そうか?ありがとう。三橋。」
 ニッと浜田が笑った。三橋もそれにつられてウヘ、と笑う。
「三橋、ごめんな。」
「三橋くん、ごめんなさい。」
 その時、クラスの一人、二人から言葉が出てきた。次々と伝染していく言葉ことば、言葉…。

 いつも、自分が謝っていた。

 でも、謝られることは今までなかった。

 歪んでいる、と分かっているけど、三橋は少し嬉しかった。

 ドドドドドドドドドドドド…

 その時、いつもの地響きが聞こえてくる。そしてドアが開き、不思議な光景が普通の日常へと変わる。
「おっはよーっ!」
 田島の無意味で元気な挨拶がクラスに響いて、ついでにチャイムも響いた。