阿部はその日は委員会で遅れて野球部のグラウンドへとやってきた。
「?」
何か様子がおかしいと感じたのは、一人でストレッチを終わらせ、監督の所へ行き、今日のメニューを確認する時だった。
このクソ野球好きで構成されている部員が、誰一人としてぽかーんとしているのだ。そして監督も一方を視線を向いたまま、阿部がそこにいることに気づかないくらい集中していた。
「…監督。」
何となく言い出しづらかったが、とりあえず話しかける。と、初めてそこに阿部がいたのに気づいたかのようにビクッとして「あは、はは。阿部くん、委員会お疲れ様。」と答えてきた。
「今日は…?」
スパーン
快音。
「う、うん。沖くんと花井くんのピッチ見てあげて。」
スパーン
ミットに綺麗に球が入っている。こんな音をさせる者はいたか?
「はい…。」
スパーン
受けているのは田島だろう。と、周囲を改めて見ると、田島の場所に視線が集中している。
よーし、9の位置にストレート 5球
田島の元気な声がここまで耳に入ってくる。
ややあって、またあの快音が響いてくる。繰り返し、繰り返し…。
「あの…監督?」
「ああ、今、見学者が来て、田島くんがその球を受けているの。」
さらっとモモカンは答える。
「今頃の時期に?」
「そう。」
なら見てみよう。と阿部も彼らの視線の先へと歩を進める。