か ら た ち 野 道
桜の嵐の中の入学式。
その後は部活勧誘の人の嵐だった。すごい人、すごい声、とびかうちらし。
その中を三橋廉は歩いていた。右手に「野球部」のチラシを持って。汗で微妙に湿っている。
(見るだけ)
自分が群馬にいる知人からとの会話に答えたにも関わらず。
そう、知人。
友達なんて、おこがましすぎる…よ。
三橋はもうずっと前から独りだ。容姿はふわんふわんのぽあんぽあんで、まぁ人並みよりかはいいのだが、いかんせんその性格と口調。友達ができるはずがない。
友達になってくれた者もいたが、周囲があまりにもその相手に迷惑をかけるので、自分からやめた。
独り。独りだ。
ここでも3年間独りで過ごしていくと考えるとすこし鬱が入るけど、それには慣れている。自分が悪いだけであって、決して他人が悪いわけではない。このウジウジした性格で、このヘンな話し方ではとけ込むほうがどだい無理なのだ。
とりあえず、とりあえず、野球部だけ見て、帰ろう。
三橋の足は、グラウンドへと向かう。
チラシに書いてあったグラウンドには、予想外に人が少なかった。ガシッと金網に手を置いて、それを見る。
(あの中に…)
なんだか笑いあっている。今年の新入生が既に来ているのだろう。
入りたい。
(でも)
入れない。入っちゃイケナイ。
楽しげな笑顔がまぶしい。あの中に入ってはいけない。二の舞をふんでしまう。それだけは駄目だ。
名残惜しげに、金網から手が離れる。無理矢理視線を外す。踵を返し、振り返らずに自転車置き場を目指す。
「メイワク だ から。」
言い聞かせるように。
「ダメピー だか ら。」
ジュモンのように。
「入っちゃ ダメ なん だ。」
家までの距離が否応なしに長く感じられた。