「…なぁ、泉?」
 巣山の声に、泉は内心ほくそ笑みながら「なに?」と素っ気なく答える。
「あいつ、なにもん?」
「お前のクラスメイトって言ってたよな?」
 水谷も混ざってくる。他を見ると栄口や沖までがこっちかあっちを見ている。

 あっち すなわち、田島と三橋だ。

 ヒョロい体に似合った、球速のない球だと思った。だが、田島のキャッチャーミットは三橋の球を受け止めてもぴくりともしない。ストレート、シュート、カーブ…変化球も多彩。それも全てが田島のミットに吸い込まれるように受け止められる。
「んじゃあ、8の方向に、カーブ連続で5球。」
 田島の声はもともとでかい。こっちまで聞こえてくる。8の方向って?という無言の問いが泉の集中する。
「ま、見てみればわかるよ。」

 2球まではふむ、とその場にいた全員が思った。
 3球になると、え? と目をしばたいた。
 4球になると、ウソだろ?と目を皿にして見た。
 そして5球…。

「全部同じ方向、同じ角度…。」
 左腕ピッチャーをやっている沖が呆然と呟いた。
「田島のミット、動いてないし…。」
 水谷も呆然と呟く。





 ナニモンだ?アイツは!




 その場にいた全員の問いだった。ただ一人…阿部を除いては。