「よーし。あー、三橋、ちょーっと待っててくれよな。」
 充分に肩も慣れたところで田島がストップをかけた。何かと思っていれば田島はそれを持ってきた。
「た…た、たじま…たじま…くん?」
 プロテクター、レガース…それは捕手のアイテムだ。何で何でなんで?どうしてどしてどうして?と思っていると全部付け終わった田島が楽しげに話す。
「あ、おれ4番やってっけど、捕手もやんの。この間のサインでちょっと投げやってみよーぜ!」
「え………?」

 投げる?

 野球部の、中、で?

 投げている人、いる中で?

 こんなダメピーが?

「ダメ…だ よ。」
 三橋は今にも泣き出しそうな顔して呟くように言った。
「なーにダメダメ言ってんだ。三橋は見学者。つまり観客その1。オレたちだって、武蔵野の試合見に行った時氷オニしてたし。そんな感じで。」
「そ…そん な…。」
「ま、だいじょぶだいじょぶ。誰も練習してるから、見てるやつなんて誰もいねーよ。」

 モモカンは見てるけど。

 それだけはナイショだ。

「ま、投げてみろ。この間の体育のエンチョーだと思って。」
 それにジャージ姿なんだから、少しは投げてみろよー、と田島が言う。三橋はしぶしぶと小さく頷いた。
「よーし。ならサイン付きでいってみよー♪」
 楽しげな田島の声が耳に入る。
 その楽しげに三橋も惹かれていることに気づいていなかった。