「あなたが見学者ね!」
最初はやっぱモモカンだよなー、と田島に引っ張られて女性の前に引きずり出された。
「三橋って言うんだぜ!」
「おい、フルネーム言えよ。三橋 廉ですよ。」
いきなり監督、しかも女性に三橋はもうビビッていた。
「監督の百枝です。今日は見学ということで、よろしくね。」
田島と泉の説明もあったのだろう。三橋は「う…あ……」の言葉の間に右左についた田島と泉によって自己紹介がなされていた。
「三橋くんね。野球やっていたらしいけど…ポジションは?」
『投手!』
田島と泉の声が重なる。
「え、投手?」
あら、と監督が呟いた。
「うちね、中学からちゃんとした投手のポジションにいた子、いないのよ。」
三橋、頭の中、からっぽ。
「え…せ… せ せ先輩 は?」
「先輩なんていないよ。いるの1年だけ。」
泉の言葉にさらに三橋の頭の中はからっぽになる。
…き、きいて……ない…よ………
「まぁ、入る入らないにしても、今日は見学でも身体を少し動かしてみてもいいわよ。…田島くん!」
「はいっ」
ぴしっと田島の背がはねる。
「三橋くんのことは頼んだわよ。今日は阿部くんに花井くんや沖くんを見てもらうから。」
「わかりましたっ!」
「泉くんは通常練習で大丈夫ね?」
「…はい。」
少し不満そうに返答する。それはそうだ。彼を自慢したくてここまで連れてきたのだ。
「よーし、三橋っ、軽くストレッチして、キャッチボールしよーぜ!」
「う…う、うんっ!」
田島のあとに続いて、三橋が出て行く。
「さー、どういう子なのかしら。」
ゾクゾクッとモモカンがぶるった。