「ふぇぇっ」
 放課後、そそーっと教室を出ようしていた所で田島と泉に両腕をとられた時のセリフである。
「まぁまぁ。」
「どうどう。」
 にこにこ、にこにこ、と笑いながら二人は三橋をもとの席へと戻す。三橋にはそれが悪魔の笑みに見えた。
「三橋、これ飲む?」
 出てきたのはいちごミルク。と菓子。必至の思いでぷるぷると細かく首を振ると「そっかー、ならオレたち遠慮なくー。」
と食べ出した。

 い、いったい…な なんだ ろう?

 泉はコーヒー牛乳、田島は牛乳をそれぞれちるちると飲みながらポテトチップの封をあける。とたんに広がる独特の香りに三橋は思わず、ごくっと喉を鳴らしてしまった。
「食べていいんだぜー。」
 パリポリいわせながら田島が言う。でも、三橋は手が出せなかった。
「ここんとこ、オレら避けてただろ?ヘンなヤツって言われたのがよっぽど嫌だったんか?」

 ばっつぁり。

 田島の言葉は本当に単刀直入だった。
「ち…ち…  ちが…ちがう よ。」
 三橋は慌ててぶんぶんと首を振る。
「お…オレは、へ、ヘンなヤツ…だから。た…たじまくん…にも…いず…みくん……」
「ああ、オレらも三橋のような変なヤツと思わせたくなかったんだ!」
 さりげなく傷つけてないか?と泉は思ったが、その言葉に三橋はびくっと全ての行動を止めた。どうやら図星のようだ。
「安心しろ。泉はともかくオレは野球バカだから。野球以外のことはオナニーのことくらいはよくわか…」
「たーじーまー、まだ女子残ってる!」
 ばしっ、と泉は容赦なく田島の頭をはたく。その姿にまたビクっとなる。
「三橋、確かにヘンだけど、この世界でいっぱいヘンなヤツ、大勢いるぜ?」
 傷つけてる傷つけてる…
 泉ははらはらしながらも田島の言葉を聞く。
「で、でも…お、オレ、イヤな…ヤツ…で……ダメピー…で………」
「どこがイヤなヤツなんだ?」
 泉がここでようやく口が挟めた。
「オレ、お前が思ってるほど全然イヤなヤツなんて思ってないけど?」
「う…ううん。オレ は すご…く イヤ、で、ダメ…」
「なんで?なら理由おせーてよ。」
 ちるちると牛乳を飲みながら田島が促す。
「お…オレ…ピッチャー…エース……3年間…ゆずら…な…かった……」

 やっぱエースか!

 田島と泉の視線が交錯する。

「へー、やっぱ野球やってたんだ。で、なんでなんで?」
 泉はわざと明るい口調で尋ねたが、三橋はオドオドとして話そうか話さないか迷ってるようだ。
「いーじゃんか、もうオレらだけだし。どーんと話しちゃえ!」
 田島の言葉に、三橋も決心が言ったようだった。

 三橋はぽつぽつと話し出す。中学生の時の話を。暗く、哀れな話を。