「なーなー、三橋。」
 食べ終わった田島が楽しげに尋ねる。
「な なに?」
 満腹感で幸せに浸っていた顔が一瞬にしてこわばる。
「三橋ってさー、中学生のころからこっちにいた?」
 いたならあの投球は噂にならないはずがない。と田島が早口でぶつぶつとつぶやく。
「ち、中学…は、ぐ 群馬…に いた よ。」
「群馬かぁ。父親の転勤?」
 ちるちると牛乳を飲みながら田島がずかずかと尋ねる。じょじょに三橋の顔が強張っていく。泉はあと1問田島が質問したら話を変えようと決心した。
「ち 中学 は、三星学園…おじいちゃん の…学校 …で。」

 はぁ?

「え、じゃあ、金持ち?」
 すっげー。と田島が声をあげる。三橋はビクッと体を竦ませる。
「今度、家、遊びに行っていいか?」
「…え?」
「三橋ン家って、すげーの?」
「う、うううううううん」
 ぶんぶんぶん、と首を横に振る。
「ならいいよな。泉も一緒にいこーぜー!」
 田島の誘いに泉も賛同した。
「三橋、別に嫌だったら断ってもいいんだぜ?」
 念のために助け舟を出しておく。
「う…ううん… い 家に ひ ひと 呼ぶの、初めてだか ら。」
「そーなんだー。じゃ、記念日だー!」
 にぃっと田島が笑う。
「お菓子買って、ジュース買って、行こうぜ!」
「そだな。」
「三橋のぶんは俺らが出す。ということで。」
「おぅ。」
「…え。」
 そこで初めて三橋が声を出す。
「あったりまえだろ?人の家にあがるのに。何も準備してないんじゃーな。な、泉。」
「そうだな。」
 妙に義理堅いのは大家族のせい?泉はちょっと田島の意外性に気づいた。
「じゃあ、今度のミーティング…あ、野球部って、一週間のうち一日、放課後野球できない日があんだよ。その日に行っていいか?」
「…い いい、よ。…で でも、つ つまんない 家、だ よ? なん も ない し。」
「つまるつまんないは着いてから〜。…な、泉。」
「おぅ。」

 田島がいてよかったよ。

 泉は心の中で、田島に感謝した。

 そのとき、予鈴が鳴った。怒涛の昼休みはもう終了する。

 三橋に近づいた。と手ごたえ抜群の昼休みであった。