キーンコーンカーンとのどかにチャイムが鳴る。4時間目終了。お昼休みである。

 どしよか どしよか

 三橋の頭の中はこれだけだった。さっきからウィーンウィーンと鈍い音もしているような気がする。

 どしよ…

「三橋っ、メシ食うぞー!」
 いきなり机ごと向き合ってきた田島に「ひゃっ」と叫んでしまった。もちろん椅子から飛び上がり付き、である。

 どしよか どしよか

 田島の机の上にはでかい弁当箱がででーん、と二つ置かれている。
「へっへーん♪今日はおやつがあったから早弁しなかったんだー♪」
 かぱっと開けると片方の弁当箱は梅干しの入ったご飯、もう片方の弁当箱はぎっちりとおかずが並んでいる。

 す、すごい な

 三橋が何か感心していると、田島と三橋の横に椅子がどかっと置かれて(その音に三橋がキョドったのは言うまでもない)、泉がビニール袋を二人の机の間に置く。これまたこんもりと山になっている。
「三橋も弁当?パンだったらもう争奪戦終わるよ?」
「う…あ……べ…べんと…」
「弁当かぁ。三橋の弁当見てみてぇ。」
 早くだせー、早くだせー、とせっつく田島に泉が容赦ないチョップを頭に喰らわせながらも泉も三橋の弁当が気になるようだ。視線にキョドキョドしながらも自分のリュックから弁当箱を取り出す。ありふれた、普通の弁当箱。
「へー、三橋、それだけで足りるんだ。」
「う…う うん。」
 泉の言葉に一生懸命答える。弁当箱の中身は少し傾いているが、手作り感溢れる弁当だ。
「俺ら野球部やってっだろ?ハラ減ってしょーがねーんだよなー。」

 ドキッ

「そうなんだよなー。食ってもくっても足りない感じ。」

 ……………………

「ま、食べようぜ。」
 時間は限られてるしなー、と泉が言って、昼食が始まった。
 この間から不思議に思っていたのだ。
 あの、「ももも、もももも…」という食べる音。
 ずっと疑問に思っていたのだが、今日一緒に食べて解決した。

 三橋は異様に咀嚼するのが速い。要はこうだ。




 確かにこれだと「ぐ」の音が聞こえない。自然と「ももも…」と聞こえてしまうのだ。
 もう少ししたら「ゆっくり食べたほうが消化にいいよ。」と教えてやろう。今はまだ駄目だ。

 少しずつ、三橋を慣らしていく。

 野球部勧誘以前に何か楽しい気分になってきたようなしてきた泉だった。