結局、5問解いて、紅茶とクッキーにありつけたのは、その20分後。花井が「先が思いやられる」というような顔をしながらも「明日は社会な。」と言った。こうやって苦手…というかやったことない勉強をみることによって、レンの頭脳もかなり傾いていたものからややこの年代にあってきたものに…まだまだ遠いか。
 またまた出てきた苦手な勉強に、幸せそうにクッキーを食べていたはずのレンが、その時だけウメボシを食べたような表情になる。その表情に栄口も花井も、思わず吹き出してしまった。



「漢字は難しいか?」
「む…ずか、しい。」
「がんばれ。あの田島だってこのくらいは読み書きできるから。」
 花井と栄口とレンが揃ってクッキーを摘みながら紅茶を飲んでいる。国語の教科書と漢字ドリル。中はミミズでのたくったような漢字が書いてある。田島レベルだ。他の文字はあんなに綺麗なのに、と全員が首を傾げる。本人曰く「外人 が 多かったか ら」との事。
 このスピードで国語と社会科の小学校の過程を終了するころ………恐らく「学校」から通知がくるであろう。レンはまだ14歳なのだ。いくら外国語・科学・物理・数学が出来ても、国語、古典、社会が出来ないとどうにもならない。国語と社会くらいはこちらで教えることが出来るが…時期がきたら通知がくるだろう。これはモモカンも頷いていた。恐らく一般の学校には入学できないだろうということも。

「ごちそうさまでした。」
「ごちそう さ、ま で した。」
「いえいえこちらこそ。」

 レンの目下の訓練は「自分への癒しの力を最小限に抑える」である。
 今まで「それ」を言われなかったのだから、最初、モモカンに言われた時は「できるんだ。そんなこと。」と正直思っていた。だが、モモカンが放った言葉は、レンの心を大いに頷かせるものであった。

確かに。

 棚の角に小指をがっつりぶつけて「〜〜〜!」な思いの後、それを癒すために全身が痛む。
 それがなくなるのであればそれはそれで確かに良い。
 てなわけで、今、セルフ・コントロールの真っ最中である。

 でも今日は、今回は、流石にそれはできなかった。

 花井が、自分たちが飲んだカップを片づけようとした時、思い切りよろけたのである。落下するカップ。慌てて拾おうとしたが間に合わなかった。

「レン!」

 栄口が叫ぶ。瞬間、右腕に激痛。見ると陶器でざっくりと切れている。深い。これは抑えられない。

 瞬間発動する緑色の光。右腕に収縮していく。いつものように激痛………が起こらない。

「あ れ…?」

 急に意識が遠のいていく。ガラスのような覆いがされる。花井の結界か。

 良く分からないまま、レンは意識を失った。


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ぐーぐーぐー