| 2 . 癒 し 手 の 眠 り |
| あのレンの元仲間がいきなりやってきて約2週間が経ち、平穏な日々を送っていると思いきや、先週から常に花井が家にいる。サボッているわけでもない。百枝、志賀はおろか、除虫屋全てを束ねているお上からの。花井、というより「ニシウラにいる結界士」と「空撃士」への命令である。故にいくら休んでも欠席とはならない。…忌引き扱い。と阿部に言われた時には学生ではない栄口も流石に微妙な顔で笑っていた。 その忌引き(?)にまでして命令された理由の先は…一生懸命小学4年生の教科書を開いてうんうん唸っているレンである。 レンの首には、黒い皮のようなチョーカーが着けられている。実はこれが「除虫屋」でも稀に見る「癒し手」の証である。空撃士や衝撃士など、一目見れば「どこの除虫屋のどの能力を持っているのか」というのが分かるようにされていており、実際個人こじんに合ったピンズや上着等が支給されている。レンの場合は「癒し手」であるが、あからさまに「誰でも治療できます。」と大手を振って歩いたら大混乱に陥る可能性が高い。 それ故作られたのが世界で作られた「癒し手特例法」。 「護り手」よりも守備側にまわるであろう、また、非常災害時等においては除虫屋と平行して「癒し手」の力を使用せねばならないということもあり、レンに関しては一応「除虫屋・ニシウラ」の「護り手」という除虫屋において「主」たるピンズなどが支給されている。「護り手」も一応、虫に対する攻撃は出来るので「武器士」が作り上げた武器の携帯を認められている。 だが、それはあくまで「対虫用」。 レンの首にあるチョーカーは「癒し手」の証というより、「癒し手」自身の身を守るためのモノである。やや厚手のそれの中にはボタン型スイッチが埋め込まれており、押し潰せば強力な電波が飛ぶ仕組みになっている。 1つごとに「ニシウラ直通」「ニシウラ含む周囲の除虫屋全て」「周囲の警察・自衛隊全て」となっている。無論悪用されないように様々な施しがされているようなのだが、その内容はレンとモモカン、シガポしか知らない。ただ知っていることは。 「…またかゆいんだ。」 栄口が困ったような顔をして、さっきから首を無意識に掻いているレンを見やった。 レンも困った顔をして、ポリ、と掻く。 それがどうしようもなく蒸れるということ。 「除虫屋の苦しみ」は「癒し手」だろうが逃さないということなのだろうか、と全員が議論したものだ。 「あと一人帰ってきたら外していいからな。」 隣で国語の書き取りを見ていた花井がぼそっと言う。同除虫屋内のメンバーが3人以上いる場合、レンのチョーカーは外しても良いことになっているのだ。それ以外だとチョーカーが反応して他の除虫屋が駆け込んでくる仕組みになっている。 「それまで、はい。」 栄口はベビーパウダーを置く。ヘタに触れないのが辛い。 「あり が とう…」 ちょっとの量を手に出し、かゆいところにポンポンとはたいていく。この頃のレンの日常のヒトコマである。 「漢字…あと5問。」 花井の言葉にレンががっくしと項垂れる。 「レン、それが終わったらお茶にしよう。クッキー焼いたから。」 項垂れてた顔がぱっとあがる。…単純だ。 「早く解かないと、阿部だの水谷だのが帰ってきて全部食べちまうかもな。」 花井のちょっとイジワル発言に、レンは猛然と漢字ドリルにむしゃぶりついた。おそるべし、食欲。 |
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はーい、おまたせいたしましたー。