温めただけだけど。と言って渡されたそれは、温かいスープであった。
「全身異常なし。とお医者さんと研究者からは言われているけど。」
 2ヶ月間、眠りについていた身体は筋肉が落ち、起きても半年以上のリハビリが必要だと言われていたのだ。レンもさぞがっかりするだろうと言っていたのだ。
 2回目の癒し手が入るまでは。

 レンのげっそりと落ちた身体にみるみるうちに筋肉がつき、新陳代謝が活発になり、そして2ヶ月前の、以前と変わらない姿になった時は、いつも理詰めな研究者たちも「奇跡だ…」と驚いていた。医師も目を見張ってその姿に驚いていた。
「癒し手のテスト、明日…いや、もう今日か。田島使って行う。」
 スプーンをもらってさあ一口の時に、阿部が言った。
「てすと…」

 ぽつりと呟く。花井が「今話す事じゃないだろ。」「言わなきゃ分からん。」と早速気づかい(気疲れ)名人と俺様の掛け合いが始まる。
「レン、食べよう。」
 西広が苦笑しながら硬直しているレンに言う。
「う ん。」

ぐうぅ〜

 腹まで返事した。
「お前、明日にゃ退院じゃねぇか?」
 泉の言葉に花井と阿部以外がくすくすと笑ったのだった。


 スープを二杯飲むと、あれだけうるさかった腹が落ち着き、まだ疲れているのか目がしょぼしょぼしてきた。
「寝たほうがいいぞ。」
オレが添い寝する!とはいはーいと手を挙げた田島に他の者たちが突っ込みを入れる。言葉派と実力行使派に別れたが。
 「いってーな!」
「お前の発言に的確な反応を全員が突っ込みを入れただけだ。」
 殴られはたかれた頭と、叩かれ蹴られた尻をいててと撫でながら、田島の怒声に阿部が反応する。
 あーはじまっちゃったよだれかとめろやだよめんどくさいはないとめろなざしおれいつものことだろほれいずみもおれはあいつのおめつけやくじゃねーぞえちがうの

 いきなり始まった田島vs阿部の戦い第何戦…誰も既に回数を数えていない…が勃発した中で、ニシウラの者たちはひそひそとやりだす。賭けに発展しないのは、花井と泉が仲裁に入るか、
「なーにやってんのあんたたち!」

 モモカンの自力金剛輪が待っているからだ。流石の二人も瞬時にいがみ合いから痛みの訴えと変化する。
「監督。」
 一切こいつらにゃ関与してません。という顔で栄口が反応し、続けて巣山、沖、西広、水谷と連続して女性監督を見る。
 「随分と賑やかね、あんたたち」と言いながら、ぎうーっと更に力をこめる。
 うぎゃっ!ぴぎゃー!と声が挙がる。さしもの栄口も心の中で手を合わす。なーむー。

「さて、と。」
 レンくん治癒はいいからね!と言いながらぱっと手を離すと、生きた屍が二体、解き放たれた。そのままばたりと倒れる二人をビミョーな表情で見る者たちにモモカンは笑いかけた。
「レンくんが起きたことは良かったわ!」
 にっこり笑う姿に、半分あらゆる意味で意識が落ちそうになっていたレンも意識を掴む。戻す。
「でももう寝ること!高校生組も!」
 ひゃいっ!はい!は…ぃ…と声が挙がる。
「大学生組は色々と話があるから隣の部屋に!栄口くん!」
「はいっ!」
 ぴっと背筋が伸びる。当然の反応だ。
「あなたはレンくんの付き添いでお願い。あと高校生組の面倒も。」
「わかりました。」
 わーい、レンと部屋一緒〜とハイタッチで喜ぶ高校生組と、奇妙な沈黙に包まれている大学生組。その差は昼と夜ほどの違いだった。
「おやすみなー!」
 田島と泉が元気に。レンはどきどきしながら手を振った。対する大学生組の魂の抜けっぷりようと言ったら!

 モモカンや栄口、及び田島が何か言うときの先制パンチとなったという…

ためこみすぎ……

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