| 口でじゃんけんという何とも間抜けな方法でトイレやら何やらの順番を決めると、とたんに機嫌の悪くなる人物がいる。阿部だ。 「あんた、少しでも間違えたらぶっ飛ばすから。」 「それが先輩に言う言葉か!」 「はい。」 怒鳴る榛名に怒り口調の阿部。がるると火花をかっ飛ばしていると、「早く榛名を佐倉を交代させろ!漏れたら阿部と榛名、双方に拭かせるぞ!」 『はいっ!』 この中の年長者である河合が吠えると阿部も榛名もシャキッとして、それぞれの分担へと戻る。佐倉はダッシュでトイレへ、榛名は水谷レベルの光を展開。 「榛名の光、ちょっとコントロールできてないんじゃ?」 巣山がおずおずと秋丸に尋ねると、秋丸は苦笑しながら「あいつ、爆破士だけど衝撃士のレベルが異様に高いんだ。」と説明する。 「利央、食堂でもコンビニでもマックでもマックでもいいからサンドイッチ系のを買ってこい!領収書切ってな!」 「はいっ!」 河合が仲沢に言うと、手伝うと秋丸と巣山が申し出た。 「巣山!沖とモモカンのぶんも忘れるなよ!」 泉がここにいない者をあげる。その時、佐倉が戻ってきた。 「買い出しですか?オレのバイク…」 『佐倉は戻る!』 市原、栄口、高瀬が見事にハモる。これ以上犠牲者を出してたまるか!という思いが彼らの絆を産んだのだろう。佐倉は慌てて榛名と交代。続いて市原と替わる。空撃士の場合はバランスとコントロールが要求されるので、榛名は市原の場所に。栄口が行く時は高瀬と佐倉が穴を埋めることになった。 レンがいつまた不安定になるかわからないので、空撃士はインカムを持っての移動である。 「じゃ、飲み物は全員オレンジジュースな。」 コーヒーや紅茶だとトイレが近くなるから。と秋丸の説明に全員が頷き、三人は出かけて行った。 「榛名!膜が安定してない!」 「うっせぇ!」 阿部と榛名の舌戦が始まる。 まあ、あれでストレス解消になんだろ。と泉は思いながら緑色の繭を見続けていた。 レンはそれから2回心肺停止スレスレまでいった。いつの間にか空撃士、光撃士、結界士にも点滴が打たれ、博士たちがタイムを計っている。長時間の除虫状態にどれだけ耐えられるか、ということらしい。 「はぁ…」 高瀬がため息をつく。もう5時間以上この作業をやっている。はっきり言って疲労のピークだ。昼飯は眠気を誘うとのことで全員が断った。 「警察屋さんもさぞかしお待ちかねだろうよ。」 河合の軽口にメンバーがため息まじりの苦笑を返す。 「しかし、こんな状態になるまで良く出来たよな。」 だな。うん。と返事が返る。 「人質とられて、目の前に末期がん患者。仲間をとるか、こんくらいになるまで力を使うか。」 栄口が呟く。 「レンは後者を当たり前のようにとったんだよ。馬鹿だから。」 田島や西広も馬鹿だけど、最高の馬鹿はレンだ。と呟く。 「やべえ。そろそろ力が尽きる。」 言ったのは市原。確かに先程から膜が不安定になってきている。 「空撃士は…」 榛名も持続性がない。壁にもたれ掛かってうつらうつらしている。 「光撃士、空撃士、一人ずつ休め。トウセイとミホシから援軍がきた。」 阿部が目の下に隈を作りながら言った。『目』は仲沢も少し使えるが、阿部のそれとは大違いで、1時間くらいで再度阿部と交代した。 「畠、高瀬と交代。」 「…ああ。」 畠はすぐに高瀬と同レベルの膜を展開。高瀬がよろけながら膜を収縮。ふわんという音をさせて消えた。 「2時間経ったら起こし…」 ふらふらと壁際まで行き、ごろんと横になると、最後は寝息で言い伝えた。 「島崎!お前は水谷の代わり!」 「了解。」 飄々と歩き、ふらふらになっている水谷の代わりを務める。 水谷も部屋の端にごろりと転がり、「オレもにじか…」言い終える前に夢の国。 「利央!阿部と30分交代!」 「はいっ!」 『目』の引き継ぎを終えた阿部はパイプ椅子からまさしく墜落して睡眠に入った。 泉、巣山、秋丸が看護師の行き来に邪魔。との事で阿部を運んで水谷が寝ているすぐ近くに置いた。 「1時間休む。いいか?」市原が恐る恐る言う。 「榛名が寝てたから、榛名をこき使うからいいよ。」 「秋丸!てめえ!」 「嘘ついてないよ。元気な爆破士さん。うたた寝は気持ち良かったでしょ?」 笑顔で切り返す秋丸に榛名はおろか、除虫屋全員がヒいた。 「オレたちも休める時休まないと。」 巣山の言葉に先程戻ってきた沖が頷く。田島は経過が安定しているので、午後には一般病棟に移されるとのこと。その一報にほっと肩をなでおろす。 「さあ、問題は去った。残るのは彼だけだ。」 疲れた顔に笑顔を浮かべて河合が全員にエールを送る。 『おお!』 後で聞いたのだが、一つの目的にこんなに多くの除虫屋が関与するのは初めてだったとのこと。 花井たちが書類と大格闘していた時に聞いたこと。良いことなのか花井が悩んだことは言うまでもない。 |
レンレンがんばれー
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