| 泉たちが端末を付け、看護師が一発で点滴の針を腕に刺した。その数秒後、違う看護師が医師に叫ぶ。 「心拍数、血圧ともに低下しています!」 あとは専門用語が飛び交って分からない。秋丸が「かなりまずい状況だね。」と一人呟く。 「空撃士、結界士、光撃士、まだいけるか?」 医師が何か注射を打とうとしている。目は閉じているものの、気配を察して阿部が尋ねる。 「まだ平気!」「全然オッケー!」「何とかなる。」「平気!」「大丈夫です!」など、全員から維持可能の返答が返る。 その間にも注射は打たれ、レンの腕に集中している阿部以外は心拍数と血圧を凝視する。 「先生!心拍数が落ち続けてます!」 「念のため電気ショックの用意、点滴に〜を追加。」 レンの腕から先に繋がっている点滴の袋や瓶が見る間に増えていく。 「レン!頑張れ!」 泉が叫ぶ。 「終わったら栄口から好物が毎日でるぞ!」 巣山も叫ぶ。 「そうだよ、レン。美味いメシ山ほど作るから頑張れ。」 額に汗を滲ませながら栄口が話しかける。 「田島も頑張っているんだ!お前も頑張らなくてどうする!」 花井が怒鳴った時、心拍数を告げる音が 早くなった。 わぁっと歓声があがる。音はゆっくりではあるが、少しずつ早くなっている。 「先生、もうレン…三橋くんは大丈夫でしょうか。」 モモカンが医師に問う。 「薬で持ち直してくれました。… 皆さんの励ましの声が聞こえたのかもしれません。」 空撃士たちが顔を見合せにっと笑う。 結界士たちがほっとした顔になる。 光撃士たちが互いに手を叩く。 その時、そっとドアが開いて、待機状態であった沖が顔を出す。 「田島の手術、成功したよ!」 わっと全員が沸く。沖はモモカンの許可を得て、田島の付き添いを途中からしていた事を巣山と泉に説明した。 「三橋くんは、今日が峠でしょう。」 近くにいた研究者たちも頷く。 「一山越えたという事になりますが、これからどうなるか分かりません。」 癒し手の治療でもこのケースは初めてです。と医師が言う。 「全員、グロッキーになっても平気か?」 「レンに何度も救われるからな。オレは疲れるだけだから平気。」 最初に答えたのは叶であった。その言葉を皮切りに、大丈夫コールが沸き起こる。 「オレたちは能力使っても疲れるだけだけど、三橋は違うからな。」 力の一端を実際受けたから、と高瀬が笑う。 「レンには色々世話になってるし。」と水谷。 「てめえの場合は大学の課題だろうが!」と泉が吠える。一同、大笑い。 「峠を越したらシャワー浴びて、メシ食って、寝る。」 高瀬の言に「田島みてーだな。」と榛名が言った。 これに関しても、全員が笑った。 田島の手術成功で、全員のテンションは一気に上がった。だが、それで疲労とかが緩和される訳ではない。 「泉!椅子を用意してくれると有難い。」 「そりゃそーだ。」 その時、研究室のドアがばたんと大きな音をさせて開いた。全員がなんだとそちらを向く。 「西広……」 花井があっけにとられたように声を出す。他の者たちも息を飲む。 「…レンが解毒剤なしにあんな強力な睡眠スプレー作ると思う?」 西広はげっそりと頬のこけた顔で苦笑した。 「え、じゃああの恐ろしい薬、飲んだの?」 沖がひぃえええと素っ頓狂な声をあげる。巣山に至っては十字を切っている。ちなみに彼はクリスチャンではない。念のため。 「何事もテストは必要さ。少し効くのが遅くなったけど。」 「んじゃあ、こういうのはどうや?」 西広が知らない声が耳元に響いた。瞬間、意識が遠くなる。 「除虫屋だって、犯罪する時があるからなぁ。」と織田が笑った。手にしているのは、小さな注射器。 「三橋が作ったモノの成分は知らないが、こっちも特性。」 「似ていても最低半日は起きないな。」 織田と叶が頷き合う。織田はさっさと倒れた西広をひろいあげると、連なっていた椅子にどすんと寝かせる。あとは役目は終わったと織田が離れる。ニシウラとムサシノ第2が頷き合う。 「丁度いい。榛名、田島と同じ部屋になるよう手配してくれないか?」 仲沢、巣山と協力して西広の体を持ち上げながら泉が言う。 「何でオレが…」 「オレが言うから榛名は西広背負って。」 秋丸が助け船を出す。 「それならいい。」けど云々抜かしている榛名の背中に、ぐんにゃりと弛緩した西広の体が乗せられる。 「うぉ!」 慌てて背負う体制をとる榛名。秋丸はその間に近くにいた看護師と話しをして、至急ストレッチャーをまわすよう頼む。看護師は了解し、部屋の確認をしに内線をとる。 「エースで光撃士、空撃士でないの初めてみるな。」 「一応、双方持っているみたいだが、レベルが意外と低い。」 高瀬の呟きに河合が答える。 「光撃士、空撃士がトイレ行きたくなったら榛名と一時交代してもらおう。」 さんせー!とどこか腑抜けた返事が返ってきた。 攻撃・防御特性のある空撃士、結界士たちは救急時の搬送に使われるし、その訓練もまた受けている。 故に、実力差はあろうとも、防御に関してはプライドを持っている。ましてや相手は成人もしていない少年。そして世界でも珍しい『癒し手』。その究極の防御特性はこれから役に立つ。故に、こんな理不尽な理由で死なせたくないのだ。 西広がストレッチャーで病室に運ばれていく。付き添いとして、沖とモモカンが行った。モモカンは田島の様子も聴きに行くとの事。 「後で田島の様子を教えて下さい。」と代表して花井が言うと、「分かったわ。先生から説明受けたら戻ってくるわね!」といつものテンションで答えてくれた。 その間に、作業をしているメンバー全員に椅子が用意され、めいめいが腰かける。 「オレたちがバックアップ体制作るから、遠慮なく言ってくれ。」 巣山の言葉に了解、と全員が返す。 「今日は除虫の日だ。」 突然、阿部が口を開いた。 「ニシウラとサキタマに関して、代理でムサシノ第二とトウセイのメンバーが動くことになった。」 ありがてぇ。と市原が呟く。自分と大地がいないとやっていけないのだ。実際。 「これに関しては各除虫屋、埼玉の除虫屋総括にも話が通った。全員、死なない程度までやれ。」 了解。と答える。が、 「榛名さん!少しの間交代!トイレ!」 水谷が叫ぶ。 「膀胱ぱんぱんなんだ!」 と水谷の言葉に、全員が生理現象に気付く。 「トイレ行きたいヤツ!」 巣山の声にはーいと答えたのは…全員。 「榛名、試されたぞ。」 あはは、と苦笑しながら秋丸は榛名の背中を叩いた。 |
レンレンがんばれー
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