| 河合は阿部の『目』から伝わってくる情報に驚いていた。 精度はともかく、相手の情報、味方の情報…これはダメージ、疲労などが全て結界士である自分に流れてくるのだ。 (除虫屋ニシウラの能力を見くびっていたな。) 『ダメージを追っている三人の近くにいる栄口、佐倉、叶、織田は三人を護衛かつ反撃。空撃士は体力温存、攻撃特性の奴は攻撃。殺すな。ボコにするのは許可。』 阿部から命令が飛んでくる。 『今回は『目』も『結界士』も結界内にいる。そこは各自考えて行動。2秒後行動!』 言った瞬間に、除虫屋たちはワッと散開し、攻撃を始める。幾度も死線を越えてきた者たちだ。そこら辺の強い者より強い。…普段は一般人を攻撃する事は厳重に禁止されているので、対人というのは流石に河合でも初めてだが、同じ除虫屋仲間が死ぬのはやはりやりきれない。 『空撃士、倒れた奴を空気で固定。ガチガチにするこたねぇ。力を温存しろ。』 『了解!』 栄口、市原、高瀬から返ってくる返事にニヤリと笑う。 (『目』もヤバい系多いが、こいつも相当だな。) 「河合さん。だだもれだ」 こりゃ失礼。と謝ったが、本人は全く気にしていないようだ。呼び捨てで指示している阿部を見て、はーとため息をついた。 相手は拳銃を持っているといってもすぐに叶たちが無力化していたおかげで、ものの2、3分で決着がついてしまった。 さもありなん。常に戦闘を行っている者とでは経験が違うものである。体術の一つかして違うものだ。 「拳銃はどーすんの?」 「結界ギリギリまで蹴っとけば?」 なぜかすっかり仲良しな利央と水谷が全く元気はつらつに動いている。 「下手に蹴飛ばすな!暴発したらどーすんだ!」 早速苦労性花井の出動する。残るのは副院長ただ一人のみ。この現状を見て、すっかり戦意を失い、腰が抜けたのかしゃがみこんでいる。 「まぁ、要請を受けた側から言うことじゃないんだが。」 パトカーの音がしだした所で、結界を解除した河合が副院長に話す。 「オレら除虫屋、ナメんなよ。という事だ。」 こくこくこくこく、と何度も頷いた副院長をほっぽっておき、怪我人である田島と、一刻も早く癒し手の眠りに入らせてやりたいレンの運搬となる。 「高瀬、ここからあっちの残り10メートルを残してスロープは作れるか?」 阿部がレンの状態を見ながら言う。目は閉じていないが、緑色の光がおぼろげながら現れている。本人も本当の限界が近い。 「あ、ああ。作ったことがないけど…」 「今すぐ作れ。市原、作ったら先に降りて。受け取る係だ。」 それならできるだろ?と言われ、あ、ああ。と市原は頷く。 「栄口、二人に空気の膜を張れ。お前が一番慣れてる。」 「了解。」 「花井。二人の結界を。」 「ああ。」 てきぱきと阿部が指示する中、パトカーと救急車のサイレンがけたたましく鳴る。近くなると安心してくるのは何故なのだろう。 「レンには厳重に。…レン、聞こえるか?」 阿部がたずねると、小さく、そして弱弱しく頷くレンに、阿部はどう言えばいいのか悩んでいた。 お疲れ様ではなんか変だし…どうすれば… 変な所で悩む男、阿部である。それが阿部である。それでこそ阿部である。 「レン、もう大丈夫。オレらがいるから眠って平気だよ。」 そしてそういう時に限ってナイス・フォローをしてしまう男、水谷。無論脇腹を阿部からの攻撃を受けてぎゃーすと叫ぶ。 「そうだ。レン、眠れ。」 「おやすみ、レン。良い夢を見てね。」 花井や栄口の声に、そしてそっと手を握ってくれた泉にフヒッと小さく笑うと。 「お。」 「あ。」 「へ?」 瞬間。 レンの体が緑色の膜につつまれた。 「花井!栄口!」 「おう!」 「はいよ!」 体を固定するために結界が。その結界を振動させないように空気の膜が張られる。連携プレーも慣れてきた所だ。 「あと田島。…高瀬。できたか?」 「ああ。救急車そばにつけた。」 「市原、先にスロープを降りろ。下で降りてくるレンと田島をキャッチ。」 「わかった。」 「高瀬・花井・栄口は維持。他のメンバーは倒れてるヤツらが動かないようにチェック。」 あちこちで応。という声があがる。叶と織田は阿部に向けて何やら書類の入ったバインダーやらを手渡している。 「これが今回の証拠。あとご老体使って人体実験してたくさい。」 「ホンマ、あきれるわ。」 叶と織田は先に潜入し、レンたちの保護と同時にこの病院の黒い部分の裏付けを頼んでおいたのだ。この病院の内情を良く知っていた秋丸の情報あってこその作戦でもある。 全員のインカムに、市原の下へ到着した事と、警察が突入した事を告げる声が入る。 「健康体はこのまま警察に事情説明。空撃士、結界士はそのまま病院まで搬送の手伝い。お互いの状況を確認し、異常なしと確認された場合、今回の作戦は終了とする。」 阿部が作戦終了の期限を宣言する。了解。とそれぞれから入る。 「さぁ、オレたちもやるぞ!」 「ああ。」 結局気絶した田島と、眠りについたレンの体がふわりと浮きあがる。 「ゆっくり行こう。」 「ああ。」 二人は、ゆっくりとした歩調で壁の穴に作られた空気のスロープへと向かって行った。 |
おやすみなさい。
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