「お前の運転、命いくつあっても足りねぇ」とぼやき、ふらふらとニシウラの前に到着したのは大地のバイクに乗って5分…

 おかしい。車でも20分はかかるのに。

 それはガクガクふるえる足が物語っているが、何故か警察に捕まらなかった。何故に?Why?と頭にクエスチョンマークが飛び交うが、無駄に元気な大地の「さあ!行きましょう!先輩!!」コールにため息つきながら後に続く。チャイムを押すと二階の窓がガラリと開いた。
「どちらの除虫屋さんですか?」
 あっ、と大地が声をあげる。どうやらあの喫茶店事件の関係者のようだ。
 喫茶店事件………もう少しで大地が少年愛好家であると勘違いされるよーな事が起きた事件だ。
 どこでどう知ったのか(大地曰く「前にどっかであったことあるんです!記憶は定かではありませんが!」との事)、大地は「癒し手」の三橋廉を知っていて、それを恋愛沙汰と勘違いした高校生がなんと大地にかわって告白して、そのなんやかんやの勢いで癒し手特例法の契約を結んでしまったのは重要な事件であった。
 怪我しても次の日にでもニシウラに行けば治ってしまうのだ。『巣』とかあった場合、三橋を緊急で呼ぶこともできる。それだけの威力がこの契約にはある。まぁ、無論菓子折りくらいは必要だが。
 そんなことを全く知らない大地は二階の男性に話しかけている。知っている顔らしい。
「えっと……エイグチさん!」
 しゅたっ、と背筋をのばして大地が挨拶をする。夜中だろーが関係ない。彼はいつでも大声だ。
「その声…除虫屋サキタマの佐倉くん?ちなみにオレはサカエグチだよ。」
「………人の名前を呼び間違えるなんて…オレはなんて心の汚れた人間なんだーーーーーーーーーーー!!!」

 会話、一次中断。

「…で、佐倉くん。サキタマの代表で来てくれたのかな?」
 ウェットティッシュで顔を拭いた大地が元に戻って元気よく答える。真夜中なのに…とヒヤヒヤするが、周囲に民家はない。ありがたいことだ。畑の植わっている作物に影響が出たらどうしようかとは思うが、それはもう考えないことにした。こいつはUMAだから。ありえない爆破士だから。
「はい!そうです!先輩と二人で来ました!」
 だから夜中なのに声が大きい!と後から頭をはたこうと思ったが、また会話が中断することはいただけないのでほっぽっとくと、あっちもそう考えたらしい。こっちをさっと見ると、窓を閉じながら「ありがとう!二階にあがってきて!」と答え、ぱたんと閉じた。
「はい!」
 自分たちは揃って玄関をくぐる。
 靴を脱いで階段をあがると大校生っぽいのが飛び出した。
「よっ!今日はサンキューねー!」
「水谷くん!久しぶり!」

 大地がどこまでニシウラの面々と面識があるのかが気になってはみたものの、それはそれ、とぽいっと投げ出した。どーせ大地だし。

「サキタマ…緊急除虫作業しない除虫屋さんだったか。」
 見慣れない人物がひょいと出てくる。ドアが開いている部屋から「てめ、秋丸!」という怒鳴り声が聞こえる。秋丸…あきまる…
「ムサシノ第2!」
「ぴんぽーん」
 市原の思わず指差した相手は埼玉支部の『情報屋』の中心に近いとされる人物である。『癒し手』のネットワークはただ者ではないとひそかに戦慄した。
「まあ、人物紹介も役割分担もまだだから。」
 いつの間にか秋丸が仕切る中、恐る恐る二人は入っていった。
 通された部屋は、さっきサカエグチとやらが窓を開いた部屋であろう、道路に面した部屋だった。
 そこに10人越える野郎どもが適当にソファーに、床に座っていた。寝ている者もいる。これから救出に行くはずなのに…と少し黄昏れてみる。
「全員揃ったようなので始める。オレはニシウラの『目』の阿部だ。」
「オレは栄口。…あ、水谷、泉起こして。」
「げ。…了解。」
 さっき見かけた水谷と呼ばれた青年は近くにあったスプレーを取ると、「近くの人きっついよー」と言いながら、本人目を閉じ鼻と口を押さえながら泉とやらの顔に吹き付けた。
「う…げほっ!」
 どういう成分なのかは知らないが、泉の目がかっと開いた。二、三回瞬きすると、目の前の水谷にくってかかろう…とした時、坊主頭と青年が止めた。
「良く寝られたか?」
 青年は離せこいつぶん殴らないと気がすまねぇといきりたっている泉に軽い口調で話しかけている。
 そこにもう一人。前線では動かないだろう青年がゆっくりした口調で話しかける。

 いい?泉。何日も不眠不休でいるとレンを助ける時、100%の力が出ないだろ?モモカンとシガポも了解済みで水谷がやったんだ。少しは寝られたんだから身体が軽いだろ?

 さすが沖…と水谷が呟く。
「重くはねぇな。」
 泉もそこは認めるようで、ソファーの上で伸びをする。
「悪い、水谷。」
「いいってことよ。」
 はい、終了。と栄口が人数分のコーヒーを持ってくる。
「ニシウラ側の紹介は…」花井、巣山、泉、沖と続く。
「ムサシノ第2からは榛名と秋丸です。」
「トウセイからは高瀬、仲沢、河合だ。」
「サキタマの市原と佐倉です。」
「あと、今ここにはいないけど、ミホシの叶くん他数名が既に動いてます。」
「ミホシ?」
 市原が問うとさっき泉をおさえていた青年…巣山から「遊軍の除虫屋。」と簡単な説明を受けた。サキタマのキワキワ人数の情報屋いるかいないか状態だと、どうしても情報不足に陥ってしまう。
「では、作戦としては…この中に空撃士は?」
 市原も低レベルではある。と前置きして手を挙げる。
 上がった手は3。意外と少ないと阿部が言うがしかたがない。
「空撃士は必ず攻撃特性を持ったヤツと、結界士と三人組で行動。結界士も三人だからいいだろう。」

 全員が頷く。

「バックアップ要員は中継と運転。残り攻撃特性は『目』の指示に従え。出来るだけ損害は無いように。」
 阿部は大地のほうを見るとニヤリと笑った。ぜってー友達少ねぇなこいつとか思いながら隣で大地が頷くのを見ていた。

いずみが起きた!いずみが起きた!

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