除虫屋ニシウラは、その場にいない田島、西広、レンを除く全員が集合していた。中央にはパソコンが置いてあり、画面の中心には赤いポイントが一か所で点滅を繰り返していた。
「もう1日以上動かないの?」
 モモカンの問いに全員が頷く。既に1日半が経過し、全員が大学を休んでポインタが動くかどうにかしてくれと祈っていた。

 レンの首のアレに発信器ついてたよな?栄口が言ってたヤツのタイプじゃないヤツ。

 巣山の問いに全員がはっとなったのは車が車庫に入り、あまり進まない食事をとっている時であった。
 確か西広がレンはこれをつけておかないと発見しにくい時もあるからね。とつけた記憶がある。
「沖!」
「うん!」
 食事中だが、沖はどたどたと西広のパソコンを取りに行く。彼のパソコンはノートパソコンなので、こういう時に便利である。無論、デスクトップも持っているが、大抵がバックアップ用と本人が言っていた。
「見つけたよ!」
 しばらくして沖が食堂に戻ってきた。両手にはパソコンが。地下から2階ぶん走ってきたので息が切れている。だが全員が労をねぎらう前にその画面を見ていた。
「これは…あの病院?」
「発信器についてるGPSは建物の中では要をなさない。だからここで止まっているんだと思う。ここから出れば、電波を拾うと思う。」
 沖の解説にふむふむと頷く。栄口はどうやっていいのかわからない表情をしている。だが、確かに見ると病院の真ん中で赤いポインタがぴこぴこと点滅しているだけだ。最終検知時間が前日の午後になっている。やはり3人は時間どおりに訪れた事がわかる。それからレンのGPSが壊されたか、出られないような事が起きたのか。
「西広も田島も緊急用のボタンを何故押さない?」
 阿部が呻く。田島はどうであれ、レンのチョーカーを良く知っている彼であれば、他の除虫屋はともかくとして、ニシウラへと緊急連絡をかけられるであろう。なのに……
「モモカンを明日呼ぼう。これはもうオレたちだけで判断はできない。」
 花井の言葉に全員が頷いた。
「明日授業ないから、オレ、動くかどうか見るよ!」
 はいはいーと水谷が手をあげる。うそこけ、明日一時限から授業だろ?と花井が思ったが、何も言わなかった。自分も同じ気持ちだったからだ。
「オレも休みだなー。」
「奇遇だな。オレもだ。」
「水谷ごときが…まぁ、オレもだ。」
 全員がわいわいオレもオレもと言っている中、栄口はにっこりと笑って
「夜食とかの用意はするから、とりあえず晩御飯食べちゃわない?栄養つけておかないと助けに行ってもスタミナ切れ。とか言ったら一生笑うよ?」
 主夫の一言、学生を刺す。
 一気に全員席について、夕食に戻ったのだった。




 次の日の一番にモモカンとシガポが少し早足でやってきた。篠岡には緊急除虫作業は入れないでほしいと要請してあることをメンツに告げ、昨日の夜、電話した内容を、改めて報告を花井と阿部から聴いた。
「では、私と志賀先生がその病院に行ってきます。その間、全員少しゆっくりしなさい。栄口くん、全員にお茶と菓子でも出してあげて。」
「はい。」
 栄口は答えると立ち上がる。「オレも手伝う。」と席を立った泉が後に続く。泉の目の下には濃い隈ができている。
「いーずみー!」
「なんだよ水谷っ…るっせ……」
 きゃっほーいと言いながら近づいてきた水谷に苛々しながら振りむいた泉に、水谷は遠慮せずに隠し持ってたスプレーを噴射した。ぷしゅーっ。効果は絶大。すぐに泉はぐにゃりとその場に崩れ落ちた。
「悪く思うなよ?お前、いっちゃんピリピリしてたかんな。」
 ちなみにこれはレンのお手製でさっきモモカンから許可もらったからー。と既に寝てる泉に説明してる。
「部屋に運ぶと怒り狂いそうだから、テレビの部屋のソファーに寝かせておこう。」
「そうだね。よろしくね。花井。」
「………」
 そうですね。言いだしっぺが行うもんですね。
 それでも泉をよっこいせと背負う時にはほぼ全員が手伝ってくれた。
「水谷、あとで泉のパンチくると思うけどその覚悟はあったのか?」
 イヤーな笑いを浮かべながらわっせわっせと泉を運び終わった後、阿部がたずねた。
「だ、誰かかばってくれる…よ、ね?」
 その問いには誰も答えなかった。

ポインタは動かず点滅を繰り返す………


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