いやいきなり沢山の緑色が飛んできて何するかと思ったら怪我の場所に止まって…
 以上、高瀬談。
「いきなり除虫屋にこれよめよーと一冊。癒し手特例法の分厚いのがきたときにはあー癒し手が生まれたんだー。くらいしか思っていなかったけど。」
 まさかこんな近くになぁ。とは河合談。
 確かに。とニシウラ以外の全員が頷く。
 その時、田島の普通の携帯が鳴り出す。荷物と一緒に置いといたのだ。
「ヤベ。栄口からかな?」
 あーもしもしと言うと田島はばっと携帯から耳を離す。少し遠いところでも聞こえる。


 田島!まさか除虫作業してたとかいわないよね?まっすぐ帰ってくるってねぇ…言ってたはずだよねぇ……


 こいつ本当に人間?とか思ってしまうくらいおどろおどろしい声。だが意を決して河合が携帯を奪った。
「あ、もしもし。」
 河合の頭の中で、戦いのゴングが鳴った。




 田島から急に違う男の声に変わったとき、栄口は田島にありとあらゆる罵詈雑言を頭の中で吐いていた。
 先月のサキタマといい、レンは癒し手特例法に基づいて行動を少々ながらも制限されてるに…
「オレの名前は河合和己。ああ、除虫屋トウセイのまとめ役で結界士だ。」
 もう、電話が変わった時からこの河合某から言われることは一つである。

「癒し手特例法にならってニシウラと癒し手の優先の契約をしたい。」

 後ろで田島が大人しくしているのは、レンがおどおどきょどきょどびくびくしているからだろう。

あー、もう!

「あとムサシノ第2もいるぞ。」
 もうため息しかでてこない。
「分かりました。こちらの統括を呼びますので、ニシウラまで来て下さいませんか?」
 声にトゲがあるのは仕方なし。
 河合も少し考えてから了解した。と言った。




 癒し手特例法による癒し手の優先の契約。…簡単に言うなら「癒し手守るから何かあったら癒し手こっちによこして〜」というそれである。前からのデータからして、癒し手は基本的に攻撃する術を持たない。もしも虫が癒し手を襲う場合や、このような緊急除虫作業の時に、優先的に癒し手の施しが受けることができる。無論、その除虫屋も癒し手を守らないといけない。ギブアンドテイク。何かと怪我の多い除虫屋には癒し手は喉から手が出るほど欲するものである。
 その場にいる全員の署名のもと、完全に除虫作業が完了したサインを交通整理などしていた警察に手渡すと、タクシーを3台呼んでニシウラに向かうことにした。タクシー代はニシウラの代金はムサシノ第2とトウセイがもつことで話は決着している。道案内をする為に、田島とレンのタクシーが先導して走っている。ニシウラは町からかなり離れた場所にある為、結構代金がかさむのは仕方がないが、3台目のムサシノの二人は、支払いができるかどうか財布を持って諭吉の相談をしていた。いざとなったらトウセイから少し借りようで話がまとまった時、タクシーが止まった。どうやらあのどんとたってる洋館がニシウラの本拠地らしい。
 ムサシノに関しては人数が配分されたのが当初非常に多かったので、分割されて分所になったという経緯がある。トウセイはその場所がら人数が多い。ニシウラは場所は広いものの、あまり虫がでてこない位置なので人数が少ないときいている。また、他の除虫屋があまりにも広範囲をカバーできるほど人数が割けなくなってしまい、比較的若い面子で最近たちあげられた除虫屋である。

 これが情報屋も兼ねてる秋丸の簡単なここいらの除虫屋とニシウラの事である。

 まぁ、隣に座ってる愉快なオレサマの榛名にいわすと「るせぇ目がいる所だ。」で終わってしまった。どうやら高校とかで何かあったらしい。よく榛名がぶちぶち言ってる「タカヤ」は年下の上にクラスがいくつかに分かれていたので知らないけど。実習とかに何かあったんだなぁと軽く考えてタクシーを降りる。ああ、諭吉さん、さようなら。領収書お願いします。
 帰りは榛名だせよやなこったいと言い合っている中、視線を感じて見ると、トウセイの方々が苦笑を浮かべ待っている。見るとあっちも日本人離れした男が一人ふてくされた顔で財布を見ている…どうやら支払いに関してはあっちも一悶着あったらしい。
 田島が走っていってドアを開ける。たっだいまー!と大声で帰宅した事を告げる。そうすると、真上にある窓ガラスががらりと開いて、同世代であろう男が一人でてきて「応接室にどうぞ。」と丁寧に少し大声で言った。声からするにサカエグチとやらではないことは確かだが…。
 洋館といえども日本式なので、玄関で全員靴を脱ぎ、1階にある応接室とやらに通される。交渉役である河合と秋丸はソファーに座り、残りの者たちはめいめい壁によりかかって、立て付けはよいのだがこの人数ならやや狭い応接室を見ていた。
「失礼します。」
 ノックとともに入ってきたのはまた違う声の男ら3人で人数分+3のコーヒーを一人が持ち、もう一人は椅子を3脚持ってきた。秋丸たちの横に置かれたということは今壁によりかかっている者はそこに座れという事だろう。
「今、こちらも準備を行ってますんで、もー少し待っててくれません?」
 へらりと笑った学生は…見覚えがある。
「あ、水谷。」
「あ、秋丸。」
 お互いに指さし合う。同じ大学の同じ学科に入っているのだ。見知った顔である。
「秋丸と知り合いなら準太と一緒だろ。」
「ああ、うん。」
「準サンははやくノート返してくださいねー。ノート代結構未払いになってますよー♪」
 沖、巣山、いこーぜ。なぁあれオレのノートとか言い合うと、三人は部屋から出て行った。
「……準太。」
「早くノート返しますって!」
 違う意味で嫌な空気が漂った。大学のノート代。意外と安くはない。誰かのノートに水谷が注釈をつけたノートは非常に高値で取引されているのだ。講義の内容は無論。そして水谷の文字でどこからか聞いたのか「参考資料〜ページの部分は良く試験に出やすい。」とか入っている。普通の相場の2〜3倍であるが、ノートの貸し借りは成立される。それだけ試験に優しいノートだったりする。
「漱石さん、何人いくかな……」
 高瀬の呟いた言葉に、仲沢がえーっという顔で高瀬を見た。
「水谷ノート、高いもんね。」
 秋丸もその話しに加わり大学の話でわいわいがやがやとやっていた。




 少し待たされ、やって来たのは、たれ目とニコニコ顔とやたらスタイルの良い女性であった。
 榛名がたれ目と目があった瞬間罵詈雑言が始まると思いきや、ニコニコ顔がタレ目の肩をぽん、と叩いた。それでおしまい。
 その笑顔がおどろおどろしいものではなかったら。である。

 榛名と阿部の邂逅はさておき、女性はぐるりと全員を見て「レン君は除虫屋ホイホイねー」とわかるようなわからないような発言をした後。

 私、除虫屋ニシウラの監督をしている百枝まりあです。

 トウセイもムサシノ第2も動揺。だって年頃な男だもん。
 かなり緊張しながら全員の紹介をした時、河合と秋丸の額からうっすらと汗が。
 ニシウラの三人もソファーに座り、めいめい持ってきた書類を広げている。

 最初、ギブアンドテイクの精神をといたが、それはほんの少しギブのほうに力がある。ぶっちゃけ言うと「そのくらい?あー、優先順度はこれくらいでいいんだね?」ということ。ちなみに特例法では更新は年一度。だがすでにどこからききつけたのか、情報屋の巣山に知らない除虫屋から声をかけられる数が増えたという報告を受けている。

 いくら金をつんでもいいから優先を確保したい。

 癒し手を知っている除虫屋なら誰もが思うことだ。

「さあ、始めましょうか。」
 百枝の一言で応接室は一気に緊迫した。


栄口最強。何故かクソレすごいぞ!でも元のノートは西広先生あたりのだろう。

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