交渉になると、水を得た魚のように目でもあり、情報屋でもある秋丸が。

 相場は話だとこうでこうですからこうでこうですね?

 対する相手は言いくるめ大得意。主夫栄口。阿部が行うかと思ったら、先制パンチを栄口がかわして口を開いてしまったのだ。阿部、役立たず。

 そうかもしれませんがこれこれこうでこうかもしれませんよ?こうでこうですから。

 ゴングを鳴らしたはずの河合は全く参加できず、他の者は既にこいつら日本語しゃべってんのかぁ?という顔をしている。
 秋丸と栄口の戦闘は激しく続いている。はー、と呆れた声をあげたらいきなり静寂が襲う。高瀬も慌てている。そこで初めて自分、河合は結構な声を出していたことに気づいた。
「いや、悪かった。」

 日本語解読出来なかった。

 言葉の裏に隠された真意に分かる者は頷いた。
 その時、いきなりな事が起きた。ドアがいきなり開いて、バスタオル頭からかぶった上半身裸の田島が
でてきたのだ。

「さかえぐちー。昼メシある?レンのぶんと。」

あー。日常。

 見ると田島の近くにはこっちも髪の毛からぼたぼた雫をたらしている三橋がいる。
「あー。栄口さん。」
 河合はその二人を見て思わず言ってしまった。

「食材とかの費用も出すから、除虫してきたオレらに昼メシの時間いいか?オレが作るから。」
 仲沢からは歓声。高瀬から笑い声。榛名はついてこれずにはい?という顔をしている。
 百枝がにっこり笑って「腹が減ってたら何もできないもんね!」と了承。
 除虫屋ニシウラの台所は、初めて他の者を受け入れたのであった。




「お いしい!」
「うめぇ!」
 ばくばくと食べる欠食児童どもに河合は「まだまだおかわりあるからなー。」といいながらも自分も食べる。ついでにニシウラの者も食べる。
「今、アップルパイ焼いてるから、その分の胃袋はあけておいて。」
 これは秋丸。これは全員の歓声をもって受け入れられた。
 栄口は河合にさっそくレシピをきいている。珍しくはないのだが、意外と作っていないレシピが多かったのだ。
「うんまいなぁ。お前ン所、いつもこんなん食べてるん?」
 お腹がいい具合になるとやはりこの質問。田島が仲沢へ。
「いいだろー。和さんの料理は最高だぞー!」
「栄口の料理も美味いぞ?なんだったら今度食べにこい!」
「へ?いいの?」
「おう!」
「ちょっと田島!そんな安請け合い…」
「まぁ、いいじゃない?レンも喜んで食べてるようだし。」
 確かにもももと食べてるレンは幸せそうだ。恐らく今は、悲しみよりも目先の美味しい食べ物で頭がいっぱいなのだろう。
 それはそれで良いんじゃない?と水谷が言う。それに関しては栄口も異議を唱えなかった。異議があるのは水谷に帰りに出しておいてと渡しておいたレンと田島の忌引き届けをすっかり忘れて帰ってきてしまったことだろうか。阿部に怒鳴られ、花井からも注意され、沖、巣山、西広もそれはちょっとかわいそうだよという視線を受け、栄口から夕食抜きと言われていた水谷は今、何事もなかったようにレンに食べ物をよそっている。
 一度席を立った秋丸が「じゃーん」といいながらアツアツのアップルパイにアイスクリームをのっけた皿を持ってきた。手伝いは西広と巣山、高瀬だ。
 食堂の椅子にさらに色々な所から椅子を持ってきて、総勢15名で食べる昼食兼おやつは凄まじいものだった。
 秋丸と巣山は互いに情報交換を始め、河合と阿部は目と結界士のやっかいさで話し合い、高瀬と花井は自分の所の監督の事を言ってドツボにはまり、ひたすら笑い転げてる。榛名は面白いモン見たとせっせとレンと田島と泉に話しかけている。たまに阿部から冷たい視線が飛んでくるが、ははんといなしている。

珍しくオトナだ。

「なぁなぁ、癒す時って、どんな感じ?」
「あ……う……と……ぬけっ…」
「へー、使うと一瞬だけ力が抜けたような感じになるんか?」
 レンの言葉を正確に訳す田島に泉と榛名はあきれたように見ている。レンはその言葉にうんうんと頷いている。もぐもぐ。口は動いたまま。
「今度オレん所にも来い。秋丸が菓子に凝ってるから、菓子が腐るほど残ってる…」
『行く!』
 田島、レン、泉が大声で答える。無論アップルパイのアイスクリーム添えを食べた感想と感激が中に含まれている事は基本の基本。
 なんか食堂に来たら嫌な予感はしていたのだ。と栄口は思っていた。今回の件に関して、田島はとりあえず後で叱っておこうと思ったが、意外な方向に話がとんで、レンは今笑顔で秋丸や榛名、そして他のニシウラのメンバーと喋っている。
 夜になったら泣くかもしれない。でも。
 栄口はちょっと席を立つと、うんうんと美味しそうに食べているモモカンに了承をとり、あっさりと了承されたのでそれを河合と秋丸に告げに行った。

 ニシウラとの優先度
 双方ともにトップ。金額は一番下の金額で。

「レンを喜ばせてくれたお礼だよ。」
 しっかりとその言葉は言って。

 榛名がいつの間にか近所の酒屋(どうやら沖あたりに聞いたらしい)に酒とか注文してて。

 真夜中まで結局どんちゃん騒ぎは続いて。色々な所で撃沈する者、くだ巻く者、喋りながら飲む者、一人二人減って……結局全員が食堂とテレビ部屋で雑魚寝となってしまった。

 ちょっとだけ(一升ほど)アルコールを嗜んだレンは、両親との幸せな時代の夢を涙を流さずに見られた。

 それがどれだけレンの心を救ったか。ニシウラの面々は二日酔いを含む顔でめいめい柔らかい笑顔で眠っているレンを見ながら今回は良い方向に転がったんだ。と実感したのであった。


未成年は酒をのんじゃいけません!

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