叶 修悟

ミホシ所属、と彼は言った。ほかほか頭で。
レンが風呂からあがってきた時、叶はガタガタと震えていたのだ。レンが半泣きになって「お願い」ウルリ目(これには栄口も勝てない。今のところ全員全敗)したので、「仕方がなく」栄口が風呂を提供した。
「レン、久しぶりだな。少しいい体型になったじゃないか。」
「そ そうか な…ウヒ。」
 目尻が下がる、眉も下がる、独特な笑み。かなり喜んでいる証拠だ。
「レン、まずは…」
 いきなり叶はソファーから床に座ると…
「……!」

 土下座した。

「すまん。あの時、お前の居場所が分からなかった。オレらは脱出するのに精一杯で…お前を連れて行くことができなかった。畠が「お前なら大丈夫だろ」と言っていたけど……」
「使えないヤツは切り捨てた、ってヤツ?」
 花井と栄口が水谷を見る。酷笑。水谷が怒ってる。これもまた珍しい。まぁ、彼に関しては自分たちにこう怒ることは殆どないので花井の胃袋もそこまでダメージがこない。ただし、水谷の怒り方もまた苛烈を極めることは確かである。
「そういうわけじゃ…」
「じゃあどういうワケ?」
 珍しく水谷が本当に真剣にキレている。花井は内心ビクビクし、栄口はもっとやれー!と応援していた。
「オレたちはいつも集団で行動していた。全員除虫屋の資格も持っていたし、逆に虫をけしかけられるヤツもいた。」
「防虫屋かよ!」
 花井が叫ぶ。虫を除去することを生業としている除虫屋にとっては、虫を守り、あまつさえそれを人にけしかける者がいるというのは授業でならっていたが、実際に比較的身近にいるということが分かり、頭を抱える。なんつー所にレンはいたんだ?
「防虫屋は、その時に死んだ。自ら呼び込んだ虫によって。」
 叶の話は淡々としている。水谷の怒りなんてメじゃない。
「じゃあ、今何やってるんだ?」
水谷があくまでも警戒心を失わないまま問いかける。それには叶はあっさりと答えた。
「除虫屋さ。」
「か のうくん、除虫屋 やってるん だ。」
 レンは嬉しそうに言う。自分と同じ道を歩み出したのだ。喜ばないはずがない。
「ああ、ただし、地域は確定されてない、呼ばれたら行く、というタイプの。」
 へー、と花井は素直に驚いていた。そういう集団があってもおかしくはないよな、と先日巣山と阿部と話していたところだったのだ。
「で、だ。レン。」
 叶は急に表情を変えた。
「さっき、お前に奇襲を試みてみた。全く歯が立たないことが良く分かった………だから。」

 ミホシに、帰ってきてくれないか?

「ち、ちょっと……!」
 とうとう水谷が驚きの声をあげた。怒るよりも、それよりも。いきなりの言葉についていけない。

 居間は、沈黙と緊張に満ちあふれた。


水谷も考えてみたら、怒らせたことがないキャラでしたね(笑)

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