4. 緊 急 除 虫 作 業 


 昨日まであれほどはしゃいで走って騒いでいた駅まで二人の会話はなかった。田島が、ニシウラの誰かに「今日帰る」と連絡を入れていた。それだけ。
 二人はやや待って、ようやく来た電車に乗る。ドアが閉まり、二人はまた車中の人となる。いつもなら流れる景色を眺めているのがレンの楽しみなのだが、今はそんな気分にはならなかった。
 駅と次の駅までは結構長い。が、電車がゆっくりとスピードを落とし始めた。
 レンは初めてのことなのでよく分からないと。田島はいつもと違うな。と二人で顔を見合わせる。瞬間

ピー!

 緊急除虫作業を告げる携帯の音。二人それぞれのリュックからけたたましく鳴り響くそれに、田島とレンは思わず顔を見合わせて、次に二人がとった行動は、リュックの中の除虫専用の携帯を取り出すことだった。既に電車は止まっている。それぞれの識別番号とパスワードを入力すると、電車からわずか百メートルほどしか離れていないところに虫が発生したようだ。
 携帯の音に「最近の若者は」と思っていた近くの人々は、二人が緊急脱出用のドアコックに手が伸びたところで、勇気あるサラリーマンが「さっきからお前ら何やってる!」と怒鳴り付ける。
「オレら、除虫屋。今の除虫作業をがあるってサイン。」
 田島は面倒臭そうな顔で、除虫屋を表すピンズを見せる。ニシウラのものと、衝撃士のそれ。
「嘘だろ!」
 他の者が声を荒げる。だが、ピンズは本物であり、彼ら二人は本当に除虫屋であるらしい。車内はいつしか静まりかえっている。
 その時、ドアが開いた。レンが両手で開けたのだ。
「嘘ならもっと簡単なモノつくって。」
 田島 く ん。早く!と先に降りているレンが恐る恐る言った。確かにこの若者たちが嘘をつくようには見えない。
「どんだけいるかしらねーけど、オレらと他何人かでぱぱーってやっちまうから、待っててな!」
 田島は言うだけ言うと、ぴょいと電車から飛び下りた。
「が。頑張って!」
 静観していた女性が二人に声をかけた。
「まかせろ!」
 ニカッと笑って、待っていたレンの肩をぽんと叩いて、すぐに走り出す。
「頑張れよ!」
 サラリーマンも声を発していた。
 今まで話していた…田島、という少年が走ったままくるりと振り向き、一度手を振って走り出す。

 車中の人々は、走り去っていく少年たちを見ていた。


いけいけゴーゴー

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