どれくらいレンは泣いていただろうか。ずっとずっと泣いて泣いて…泣き疲れてしまったみたいで、目が半分閉じかかっている。
 田島はレンを布団の上にゆっくりと寝かす。間隔をあけて置いてある布団一式をずずぃーっと寄せて、自分も潜り込む。
 ぐずっとレンがまたしゃくりあげた。あまりにも幼く、細く、小さく見えるレンを、脅かさないようにゆっくりと抱きしめる。
「レン、オレだって、他のニシウラのヤツらだっている。死なないから…」
 ぐぴっとレンがまたしゃくりあげる。また涙がでてきたらしく、さっき母親がこっそりと置いていった濡れたタオルでまぶたを押さえてやる。ひくっひくっと体が動く。
「今日はオレしかいないけど、ニシウラに帰ったらみんないるからな!今日はオレの胸の中で安心して寝ろ!いっくらでも泣いてかまわねーぞ!」
 その言葉に触発されたのか、またレンが泣き出す。が、その泣き声も薄れ…やがて寝息となった。完全に泣き疲れて眠ってしまったらしい。
「よっ…と。」
 田島は自分の枕をとって、隣に置くと、自分も目を閉じた。
 レンの両親が他界してて、自分の家族がその骨を持っていた。それは少なからず田島にもショックを与えていたのだ。恐らく母親がレンがニシウラにいることがわかった途端、モモカンと電話をかわれといったのはこの話だったんだろうとぼんやりとした頭で思う。
 明日はレンを元気づけるために、畑に行ってじーちゃん達と野菜をとろう。とった野菜でご飯を食べる。レンはオレと一緒で沢山食べるから。
 少しだけ浮上した気分で、田島も眠りの世界へと足を踏み入れたのだった。




 どんなことがあっても、夜は来るし、また、朝もくる。
 早朝、田島に起こされて、彼の祖父の畑の野菜の収穫を手伝ったレンだったが、まぶたは厚ぼったく、目は真っ赤に充血していた。自分が寝た後も泣いていたのだろうかと思いながらもたわわに実った野菜を、鋏でちょんと採る。これは全て朝食になることを告げると少しだけ笑顔を見せた。
 無言でちょんちょんと野菜を切ると、やおら田島は立ち上がる。
「レン。」
 え?とレンが田島を見る。
「ニシウラに帰るか。」
 唐突に言われた言葉にレンは困惑する。
「レンの…とーさんかーさんを連れて、さ。ニシウラの奴らに紹介するんだよ。そうしたらおとーさんおかーさんも安心するんじゃ…おわっ」
 最後は言葉にならなかった。野菜を放り出してレンが抱きついたのだ。また涙腺が決壊したらしい。泣かせるつもりは全くなかった田島も少し驚いたが、ここで両親の話を出すのはダメだったかなぁと少し反省。でも。
「おとーさんおかーさんにここで生きてますって言えば…安心する。」
 ぽんぽんと背中を叩いて子供をあやすように話す。
「ニシウラの……花井も水谷も栄口も泉も巣山も沖も西広も阿部………も。みんなイイヤツだから。」
 最後の名前にはやや微妙さがでたが、イイヤツには違いない。たまに裏目にでるが。
「でも…た じ……」
「あー、オレの事は大丈夫。家族はみんなわかってくれるし、なによりレン、みんなお前のことを心配してるんだぞ?」
「う……」
「そう。いきなり昨日両親が既に死んでるって話をきいたヒョロッと細いオレの友人が悲しみに打ちひしがれてるのを見てほっぽっていられるわけないだろ?」

 行うことは最善のことを。

「ニシウラに帰って…うまい飯くって、思い出話とかしたら、供養になるんじゃねぇか?」
「う……」

 ややあった後、レンの首がうん、と小さく頷いた。
「よーし決定。あ、うちの家、朝食だろうが争奪戦激しいからな!」
 ニシシと笑って田島が走り出す。
「う、お!」
 あわててレンが走り出す。
 カゴの中には、沢山の野菜が入っていた。


田島様!

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