| 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」 叫び続けているレンをどうしようかと考えているとき、レンの体がふっと力をなくした。そのまま気を失ったらしい。母親を見ると、エプロンの端で目を拭っている。こうなることを事前に予測していたようだ。家族も何も言ってこない。 自分よりも年下で、7年ぎりぎりまで暗殺者として生きてきたレン。親に会ったことはなかったし、また、失踪宣告を解除し、除虫屋に籍を移動しても一切連絡がなかった。それに関しては花井はおろか、栄口ですら何も言ってこなかった。 母親はゆっくりと白木の箱にかぶせてある布の固まり二つを元の場所にそっと戻すと、「レンくんの事は頼んだわ。」と部屋から去っていった。 こちこちこち、とどこかで時計が時間を刻む音だけが響く。家の者たちはどうしたのだろうか。ここは外から一番奥まった場所だ。暗くて…年中かくれんぼには適した場所にもなっていた。今は…ただ、ただ寂しい場所としか感じられなかった。自分たちが隠れているその傍で、暗殺という闇の世界に身を投じるしかなかった少年の亡き両親が眠っていただなんて、誰が考えつくだろう。 「ここはレンにはつらいだろうな…」 倒れ伏しているレンをよいやっせと背負うと、うんせわっせと自分の部屋へと移動する。襖を足で開け、すでに敷いてある布団の上にレンを寝かせる。ちゃんと毛布を肩までかけて寝かせた後で、誰かが部屋の入り口に置いてくれたらしいリュックの中から携帯を取り出す。相手は誰でもいい。 2コールで出た。声の主は…花井。 「花井!」 『レンは…?』 田島は舌打ちする。わかっていたのか? 『オレらもおまえらが出かけてから聞いた。…その…レンの両親が…』 「そっか。」 花井は良い意味でも悪い意味でも嘘はつかない。下手に嘘をついて自爆する水谷とは大違いだ。阿部は嘘はつかないが、本当の事もたまに言わない。栄口はにっこり笑って平然と嘘をつく。…レンに対しては優しい嘘しかつかないが。 「今、オレの部屋で寝てる…気絶して、そのまま。」 はっ、と花井が息を飲むのがわかる。後ろのほうから栄口や西広の声が「田島?」とか聞こえてきている。 「そうか……レンは忌引き扱いになってる。モモカンが書類を作成してお前も忌引きとなってる。だから休みを延長することも可能だ。」 「そっか…」 レンを見る。色をなくした顔には、涙の一つも浮いていない。 「帰る日はこっちから連絡するから、そん時は栄口に美味い料理作ってといっといて。」 「わかった。何かあったら何時でもいいからオレや栄口、モモカンやシガポに電話しろ。」 心配性な結界士はぶっきらぼうながら優しい言葉をかけてくれる。 「りょーかい。とりあえずは確認と連絡だからな。」 「ああ。また電話してくれ。」 「あいよ。じゃあ切るな。」 「ああ。レンにもおやすみと言っておいてくれ。」 背後からオレもオレもと声があがっている。それにも了解の意を示して電話を切る。 携帯をぱちんと閉じた時、レンが呻く。意識が戻ったらしい。 「レン?」 「た…じま く ん?」 声が掠れている。あんなに叫んだのだ。喉がおかしくなっても仕方がない。 「水、飲むか?」 バッグの中から飲みかけのペットボトルを見せる。おずおずと頷いたレンに、キャップをはずして手渡す。おぼつかない動作でゆっくりと飲む。最後はむせてえふえふと咳き込む。あわてて背中を叩きながら「大丈夫か?」と話しかけた。 「う ん。」 「嘘つけ。」 レンも嘘はつけない。ペットボトルを受け取り、キャップをしっかりと閉めると、ぎゅっと抱きしめる。 「!」 「泣いていいんだよ。オレもうちの犬が死んだ時、すっげぇ泣いた。」 「……」 「ここはオレとお前だけだ。どんなに泣いたって、ひいじいとかには聞こえない。」 「う……」 ひく、ひく、とレンの体が痙攣する。 「泣いて、いい思い出を思い出してもっと泣けばいい。それが供養だと思う。」 既に亡くなっていた両親に。笑って見送れるなんてことは出来ない。 「泣け、レン。」 言って、ぎゅっと抱きしめる。瞬間、レンの涙腺が決壊した。 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」 泣きだした。いつもと違う、全ての悲しみを凝縮した悲しみの慟哭。 田島は、背中をぽんぽんと叩きながら、レンの両親の顔をぼんやりながら思い出して。 一緒に、泣いた。 |
らーぜメンバーでウソが顔にでるタイプは、三橋・田島・花井、そして沖だと信じて疑ってません 笑
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