「あ、もしもし?」
 田島のかけている電話の声も、心なしか弾んでいる。食堂で全員が何気なくお茶を口にしながら風呂待ちしている通常除虫作業の後。今は西広が風呂に入っている。今回のじゃんけんで見事4連勝中の田島と次点レンが一緒に入り、その後阿部、巣山、西広と続いている。ちなみに最後のドロドロの湯に入るのは目下10連敗の花井だ。彼には不運の星か何かが絶対に憑いているとはレンを除く全員の意見の一致をみている。
「うん。オレ。オレオレ。詐欺じゃないぞ?ったりめーだろ?」
 電話の相手も笑っているようだ。
「前回帰った後なんだけど…覚えてる?オレがちっちぇー頃良く浜田と遊んだ…そ。レン!三橋廉!今ここにいるんだぜ!」

なんですってーーーー!
 
 田島の携帯から響いてきた声になんだなんだとそこにいた全員の視線が集まる。レンも自分の名前が急に出されてうとうとしていた所をビクッと身を起こしている。

いい?悠、絶対に廉君を連れてきなさい。いいわね?

「え?いいの?」

構わないわ。…そうね。ちょっと百枝さんか志賀先生に代わってもらえるかしら?

「いいけど…ちょっと待ってて。」
 疑問符を50コくらい頭にのっけたまま、田島は既に報告書の作成に入っているモモカンと阿部のもとに向かう。
 5分後、笑顔で一杯の田島がレンを力いっぱい抱きしめる。
「レンー!お前も一緒に休暇だぞー!」
「うぉっ?」
 泉にしばき倒されるまで、田島の抱擁は続いた。



「なーんだ。まだ心配してんのか?」
 田島の家は駅から歩いて20分の所にある。のどかな田園風景が広がっている中にあるという。レンはちょっとまごついた後、こくんと頷く。
「かーさんがいいって言ったんだから、いいんだろ?オレ、レンと遊ぶの楽しみー!」
 ニシシと笑いながらレンの背中をばんばんと叩く。二人とも、リュックサック一つの軽装だ。
 田島にそう言われると、なんか自分も楽しくなっていく。
「色々あそぼーぜ!レン、何も知らないだろ?キャッチボールやってみようぜ!」
「う うん!」
 きゃいきゃいと二人が歩いているうちに、家が近づいてくる。一部二階建ての、広い家だ。
「さーてと。あそこの家まで競争!よーいドン!」
「わ わっ!」
 走り出す田島を負けじとレンも走り出す。二人とも心肺能力が高いため、短距離では殆ど一緒で。
「どうちゃーく!」
 田島がニカッと笑う。レンもウヒッと笑う。
「ただーいまー!」
 ガラララララ、と引き戸を開ける。
「おじゃま し ます。」
 田島は勝手知ったる我が家。レンは初めて来る「友人」の家にドキドキしている。

 こうして、田島とレンの、二泊三日の帰省旅行は始まった。


母さん最強。

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