| 「花井、結界張ったか?」 「当たり前だ。」 「んじゃ、栄口。」 「はいよ。」 味気ない白い部屋の中、茶色の髪の少年がふわりと浮き上がる。 レンの体温が戻るのは存外に早かった。全て正常値に戻ったところでニシウラから正式な申し立てが入った。 曰く「倒れて気づいた場所が研究所ならレンなら間違いなくパニクる。」 前回の癒し手特例法に基づくレンへの対応もそれ相応に大変だった(それでも調べたいと言っていた研究者は何人もいたが)ので、今回は自分のベッドで目覚めたことにする。ということになった。 すいよすいよと眠っているレンを花井が結界で包み、栄口が空気のクッションで運ぶ。このところ慣れた光景だ。研究所の前にバンは停められており、すぐにレンが入れるようドアは開けはなっている。 「栄口、花井は真後ろ。水谷運転。」 「阿部は?」 「報告。」 命令するだけしておいて助手席に座り、早速携帯を取り出している阿部に、水谷は溜め息をついて…でも後ろをちょっと向いて、へらりと笑って、「安全運転でいくからなー。」と小声で怒鳴った。 「おー。」「よろしくな。」と栄口と花井が声をあげてくる。 今回のレン大移動は、高校生組には伏せてある。帰ってきたら五月蠅そうだが、阿部や栄口、花井がどうにかするということで決着を見せている(水谷では無理だろうということで誰もそのメンツに入れようとしなかった)。 「百枝監督、13時40分、バンに移送完了。これからニシウラへ戻ります。」 阿部の声がバンの中に響く。水谷がエンジンをスタートさせる。 バンがゆっくりと動き出す。モモカンのアレはなんだったのー?くらいな安全運転ぶりで。 ちなみにニシウラの中で飛ばし屋と呼ばれているのは巣山と西広である。この間はあり得ないくらい優しい運転をしていた巣山だったが、彼らの運転する乗り物には絶対に乗らないことは鉄則になっている。三半規管が狂ってもよいのであれば乗っていいけど?くらいなレベルで暴走する。 『免停になるような走りはしないから!』と二人は言うが、どのレベルでモノを言っているのか、未だに花井は分からなかった。 それはさておき、バンは法定速度を守り、安全運転で走る、走る。 「…はい。了解しました。あと10分程度でニシウラに到着します。」 様々な所へと阿部は連絡をとっていき、漸くパタンと携帯を閉じた。ふぅ、と息をつく。 「もう少しだなー。」 「黙れ五月蠅い。そのニヤケ顔やめろ。」 水谷の言葉を姿なき日本刀で一刀両断する阿部。 「ひどっ!」 運転しながらよよよと泣く水谷。 「家帰って、レンを部屋に連れて行ったら、結界は解いて…しばらく布団と体温をなじませるのに薄い空気を纏わせようと思うんだけど。」 「できるのか?栄口。」 「やったことないけど…やるよ。」 ニシウラ到着まで、あと5分。 |
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阿部さん、レン救出にどれだけのえげつないことしたんでしょ?