癒し手の眠り。─────癒し手の中でも最も謎としておかれているもの。癒し手の持つ色を纏い、ほぼ仮死状態に陥り、その際、少しでも動かすと脳がダメージを受け、様々な障害が残る。最悪の場合、脳死という場合もあるので、癒し手の者はその時期にはどの除虫屋の結界士、空撃士、目等の保護を受けて良い。これは国内に及ばず、全世界の癒し手に当てはまることである。これが「癒し手特例法」の一つの骨幹でもある。

「癒し手っつーのも、大変なんだな。」
 ぺいっ、とその項目が書いてあった分厚い本を投げ捨て、田島が言う。慌ててその本を拾う花井。哀しいくらい苦労性がにじみ出ている。
「田島っ!お前!この本高いんだぞ!」
「ふーんだ。」
 田島がここまで不機嫌なのもまた珍しい。泉と視線を合わせると、大げさに肩を竦められた。



 レンが「癒し手の眠り」に入って3日目。漸くニシウラの面々に面会許可が下りた。モモカンと志賀が様々な関係各所に出向いている為、車の運転は今回は自ら買って出た巣山が行っている。これがいつものバン?と思うくらい、安定した走りをみせている。………全員はあらぬ方向を向いている。実はちょっと怖い。巣山の運転はモモカンも真っ青な運転なのだ。
「今日も1時間見られるかどうかなんだろ?」
 ぶすっ、と田島がこぼす。本当に不機嫌だ。
「まぁ、他人も癒せる「癒し手」の「癒し手の眠り」なんて珍しいから、古今東西の研究家が一堂に会しているらしいよ。」
 栄口がのほほんと返す。阿部は「着くまで起こしたら殺す」と言わんばかりの気配をまとったまま寝ている。どうやったらそんな芸当ができるのか知りたいと沖は思うのだが、同じく近くですーすー寝ている西広もある意味大物だと思ってたりもする。
「今回は他人を癒してでの初めての眠りだから、どーしても注目したいんでしょ?時間も正確に計っているらしいし。」
 水谷が言う。阿部重い、と避けていたら、背中一帯を征服されてしまい半分腰掛けの状態になっている。彼は大物ではない。無謀という。もしくはバカ
「まぁね。レンの首のヤツはその為のモノ…という意味合いもあるらしいし。」
 ハンドルを握る巣山が答える。 
 何せ本人の包む膜が全てを遮断しているのだ。首につけたそれが研究のための小さな糸といってもいい。それだけ情報がないのだ。それが安定するまで時間がかかったらしい。
「何度もオレと西広の所に「改造しました?」という連絡きたし。」と沖。
「改造したのか?」
 花井が恐る恐る尋ねると、沖は首を横に振る。
「オレたちしてない。」
 その言葉で溜め息をついた。レンが「ちょっと」いじくったのだろう………


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タジー不機嫌。巣山安全運転。