1. 幕 開 け 


レン……三橋 廉のもとの職業は、日本では、いや、世界でも珍しい「暗殺屋グループ」だった。彼がいた所は様々な人体実験やら何やら黒いことしかしていない組織の研究所だったらしい(それに関する裏付けなどは警察とかその上がやることで、自分たちが出来る事はレンと仲良くして、勉強を教えることだと思っている)。そこの中心的な施設が「虫」に襲われ、仕事の後で眠らされていたレンが救助されたのは半年前。

 ゆっくりと、冬に向かう時期のことである。


「こんなこーはーるーびーよーりのー、おーだーやーかーなひはー♪」
 水谷が開けた窓の外を見ながら歌う。花井は何やら読書。他は全員学校。二人も午後からは出勤…もとい、大学の授業である。そういう事に関しては制約のない栄口はレンとお茶を楽しんでいる。
「…水谷。」
「ん?なに?」
 栄口がにっこりと笑って言う。
「結構音痴?」
「うわきたよ!」
 きゃーっと水谷がのけぞる。のけぞったついでに読書していた花井の腕に当たる。
「水谷、邪魔。」
「うわこんどはこっちから!」
 ひゃー、と水谷がおどけたように顔をしかめる。
「もうちょっと練習しなよ。レンがそれで覚えたら大変じゃない?」
「それは言えてるな。」
 三人の視線が急に集って、レンはオドキョドしだす。その姿にももう慣れた。
「紅茶淹れるけど?」
 はーいはーいはーい、と手が挙がる。全員飲むらしい。
「分かったよ…全員カップ出して。」
 栄口のもとに、3つのマグカップが揃った。
「レンはミルクと砂糖たっぷりだね。」
 うんうん。と頷く。既にかき回し用のスプーンも持っている。
「水谷はレモン、花井はストレートでいいのかな?」
「もっちろーん。」
「ああ、頼む。」
「はいはい。」と栄口が立ち上がった時、キィンと何か金属音がした。

 カランカランとフローリングの床に落ちているのは……ナイフ。

キンキンキィン!

 レンがスプーンを振り回している。そこから音が発生しているのに気づいたのは、レンが最後の一つを打ち終えて、窓から外へ出た所だった。
「な…ちょっと!」

 どうなってるの?

 そんなのオレが聞きたい。

 水谷の叫び声に、花井と栄口は同時に同じ思いでいた。


さぁ、はじまりはじまり。

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