この一ヶ月間、様々なことがあった。

 癒し手としてレンが認証を受け、それからレベルのテスト。レンがあまりにも白衣を嫌がるので、白衣がステータスシンボルな教授や医師などは全員普段着とエプロンという前代未聞の方法でテストを行ったことを言っておこう。

 明日は退院。ようやくこの窮屈な病院から解放される。

 前代未聞の「癒し手」の登場に、除虫屋に携わっている者たちの間では、ニシウラの話でもちっきりだ、と巣山が苦笑しながら教えてくれた。これからしばらくしたら、レン専用の「癒し手」のアイテムが身体に装着されることになっている。体質上手術はできないので、首に何かを巻き付けるのではないかという沖、西広の言葉に巣山が頷いていた。実際、様々な実験が既になされているらしい。

 それは脇に置いといて、明日、あの家へ帰れるんだ。と一人ジーンとひたっていると、個室部屋にノック。気配で分かっていたので「ど どうぞ。」と割合早く言葉は反応した。

「明日だなー。お疲れ。」
「ごくろうだったな。」
「おつー。」
「明日は栄口がレンの好きそうなモン沢山作るって。」
「そうだよ!楽しみにね。」
「レンの防護服も入ったよ。」
「あと…武器もとりあえずご注文通りに。」
「情報屋はこの話で持ちきりだよ。」
「明日は全員家でまったりしようぜ!」
「田島にしちゃあいいこと言うじゃねーか。」
「まぁな。泉、これくらいは言わせてくれよー。」

 ぞろぞろぞろぞろぞろ、といつもの仲間たちが入ってくる。全くもって賑やかだ。


「で、だ。」

 阿部以外、さっと一歩下がる。

 彼のいつになく真剣な言葉でレンのほうを向く。

「オレからWindに最後の命令を伝える。」

 すっとレンの表情が変わった。

「これからレン…三橋 廉として、ニシウラの仲間として、友人として生きろ。Windは風と共に去った。マスター権限は永遠に放棄し、またレンはマスター認証をしなくても良い。」

  言っている意味がWindとしてわからなかった。
  言っている意味がレンとしてわかった。

「もう、暗殺の仕事は永遠に来ない。お前は除虫屋ニシウラの一員だ。」

 いつもなら劇的に変わる表情が、ゆっくりとレンのそれに戻っていく。いいんだ。もう、その仕事は永遠に来ない。

 彼らがいる限り。

「わかりまし…た。 あべ く ん。みん な。」

 泣き笑いの表情に、早速田島が抱きつき、今度こそ押しくらまんじゅうとなった。


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