レンが全員を見回すと、自分と同じような格好をしていた。栄口だけは右腕と左足に包帯をしているが。
 田島と目が合うと、ニー、と笑う。そして聞きたいことを教えてくれる。
「この格好?ああ、全員検査入院。癒し手がこんな大人数を一気に治癒した前例がないからって。とりあえず。」
 水谷は水虫…インキン?が治ったんだって?
 水虫だぃ!
 水同士お似合いだ。
 今回ばかりは阿部に同感だね。
 でもなんで田島にゃならねーんだろ。
 あの部屋に住んでるから、耐性がついてるんじゃないか?
 そうかもな。
 うんうん。
 水谷はあの部屋で暮らしたら、間違いなく全身インキンだな。
 うわっひでぇ!
 ひどいのはこっちだよ!
 はいはい、静粛にせいしゅくに。レンがまだ熱下がってないんだから。

 全員(特に田島と水谷)が落ち着いたところで栄口が結果を出す。
「全員、脳波、身体、影響なしだって。」
「で、レン君は癒し手特例法にならって、「癒し手」としての認可が降りました。」

 全員が振り向く。そこにはモモカン、シガポ、そして篠岡が立っていた。

「今日は寝なさい。これは監督としての命令。前例ない癒し手だろうが、除虫屋ニシウラに所属しているんだから、あたしと志賀先生には従ってもらうわよ?」
 にっこりと笑いながら百枝が言う。
「はい、レン君。」
 モモカンと違う、若い女性の声。驚いて見ると、そこに水谷たちと同じくらいの年齢の女子が、食事が乗っているトレーを差し出しながら立っていた。
「あ、言うの忘れてた。しのーか。」
「うん。あたしはニシウラを担当している「鷹の目」の篠岡よ。今回はごめんね。みんなにも謝ったんだけど、レン君は目を覚まさなかったから、後々になっちゃって…」
 トレーをテーブルの上に置く。その手が小刻みに震えている。
「だ だいじょう ぶ、だよ!」
 まだ目眩のする身体を起こしながら、レンは言う。
「みんな いる か ら。」

  まもれた から。

「いいんだ よ。」
 ウヒ、と笑った。

「さぁ、レン君、食べたら薬を飲んで、ゆっくりと養生してね。「癒し手」と認定されたから、色々とやることがあるからね!」
「は、はい!」
 言われて西広から手渡されたスプーンを持つ。重湯に近い粥を一口食べると、どれだけ自分のお腹がすいていたかわかった。

 あっというまに平らげると、篠岡がまたトレーを持つ。沖が薬と水をレンに手渡す。
「かーっとのんじまえ!」という田島の声に応援され、苦手な薬もぐっと飲んだ。
「じゃああたしと志賀先生はまた除虫屋の会合に出るから。全員、とりあえず部屋に戻りなさい。」 
『はい。』
「じゃあレン君、ゆっくりと休むのよ。いいわね?」
「後のことは任せてな。」
「休んでね。また来るわね。」
「レン、また後でな。」
「おやすみー。」
「おやす!」
「ゆっくり寝てろよ。」
「レン、ありがと。ゆっくり休め。」
「ちゃんと休めよ。」
「寝ろよ。」
「あったかくして寝て。」
「おやすみなさい。」

 その声とともに、全員の気配が遠ざかった。

 レンの意識もまた遠ざかる。

 うれしさと一緒に、夢の中へと。


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