『阿部!あと何匹!』
 水谷の声。
「そこにいるのは残り10匹。終わったら指示を入れるから声をかけろ!」
『こっちは?』
 栄口の声。
「そっちはその3匹で完了。終わったら、残りの掃討に移る。東方向に5匹と北方向に7匹。それがお前の持ち分。」
『了解。』
 がっつんがっつんと音をたてて、結界に虫が体当たりしている。
「花井。」
「大丈夫だ。」
 淡い緑色に包まれた花井はうっすらと笑みを浮かべながら答える。
『栄口、穴のほうの虫完了、東のどこ?』
「そこから…もう家屋は全壊しているから、空撃でそこを抜け出して、道路に出た所を左折。5メートル…いや、移動した。 3メートルに2匹。終わったら報告。花井の胃袋を悩ましているヤツの掃討に入る。」
『了解。』
『あべー、終わったぞー。』
「水谷はその場から西北西に移動。…身体を左向きにしてまっすぐ行けば道路に出る。そこを左折。直線で8メートル先に1匹、左斜め上にもう1匹。それからまた移動だ。」
『了解!』
「レン。」
「うわっはっはっははははははい!」
 突然呼ばれてオドオドキョドキョドとなるレン。
「そろそろラストだ。花井を残して全員「障壁」を解いていい。」
「え…あ………」
「お前の体力じゃ保たねぇだろうが!」
「ぴゃぁ!」
 半泣きになりながらしゃがみ込む。
「さっさと花井以外の「障壁」を解け。」
 言うと、阿部はさっさと地図とにらめっこ。花井の肩に手を置いたままだ。
「う……ぁ……」
「さっさとしろ!」
 阿部がキレた。いつものことだけど。
「は…ははははい。」
 レンは泣きながらもすぅっと息を吸う。

「しゃぼんだま きえた。 みんな消えた。
 花井くんの 残して みんな消えた。」


『お、レン「障壁」といたんだ!』
 さっそく田島の声。元気はつらつ。
『障壁ありがとな。阿部、オールクリア。次どこ行けばいい?』
 栄口。
「そこをそのままつっきって、大きな通りにでる。結界ギリギリの所だ。そこに10匹ほどいる。水谷も最後の1匹しとめたら、2つめの角を右折。10メートルほどで結界ギリギリの所に出る。そこに20匹ほどいるから掃討。」
『了解!』
『りょーかい!』

 阿部にはその時、全員の位置と虫の位置が分かっていた。栄口が7匹まで倒し、水谷が16匹まで倒した。
『阿部!』
 突然入ったせっぱ詰まった泉の声に、なんだと答える。
『こいつ、いつ爆発するか分からねぇ!新しいタイプだ!』
『どこに衝撃いれても変わらねぇ。ヘンだぜコイツ。』

 栄口と水谷が掃討を完了した。よし。

「泉と田島は離れて待機。栄口が来るまで待っていろ!」
『了解!』
『あいよ!』
「栄口!聞いてのとおり…………」

 閃光。あまりに近くにいたために目を閉じるのも忘れる。目の前の虫が爆発したと気づいた時には遅かった。

 次の瞬間、花井の結界内が荒れた。そのままショックが入ってくる。
「はな…い……」
 自分も荒い息を吐きながら隣を見る。花井は気絶はしていない。だが、口から血をごぼりと吹き出している。内蔵をかなりやられたらしい。こっちもかなり損傷している。「目」と「結界士」はあるレベルまでシンクロしてしまう。ダメージもしかり。
「ぜんい…ん、生き、てる か……?」
 阿部もぜえぜえと息をしながらたずねる。返事がない。
「田島!」
 生体反応はある。
「泉!」
 生体反応はあるが、かなりヤバい。
「栄口!」
 建物の下敷きになっている。非常にまずい。
「水谷。」
 結界の近くに倒れている。状態が分からない。

「くそっ!」
 モモカンが後ろで救護班を呼んでいるのが分かる。最低限の人数できりもりしている除虫屋だ。誰か死んだら新しい者が入る前に解散になるかもしれない。
 ごふっ、と口の中が鉄臭い。予想外のダメージがかなりこっちにもきている。
「花井…結界を消せ。除虫完了だ。」
「りょ…か い。」
 ふっと結界がとぎれる。瞬間、花井が倒れる。
 阿部も意識がとぎれがちになる。貧血と痛みで目の前が暗くなっていく。

 その時、

 レンの声を聞いたような気がする。

 すぐに意識を失ったため、分からなかったが。


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