言われた通りの格好をする。…熱い。
 廊下に出ると、もっとすごいのが…。
「あぢぃ。」
「死ぬ。」
「蒸れる…」
 既に半屍と化した、田島、水谷、泉の三人。まだ夏ではないが、それでもその格好では熱い。見るからに熱すぎる。
「おー、レン。初仕事だなー。」
「次回から参加だって?阿部の命令は怖いからなー。」
「ウザいし。」
 う ん?と頷きながら、食堂のドアを開け、どやどやと4人で入る。
「このぴったり感が…って、レン、できあがった?今日はピンズタイプのやつを西広のコートの上に除虫屋マークから上につけていって。」
 はい、と防護服を着た栄口がレン用の除虫屋の証である水色のティアドロップ型(下に四角いプレートの中にNISHIURAと刻まれている)と、「護り手」とそのレベルがついたピンズが手渡される。
「ああ、レン。はい、コート。」
 手渡されたコートは新品のようで、白の皮みたいな色と手触りを教えてくれる。
「オレらは武器士だから、通常勤務には出ないんだよ。」
 と西広。
「だから、今回は西広ので我慢なー。」
 沖が笑いながら言う。
 やはり20歳と14歳。ダボダボにも差がありすぎる。
 同じような後方支援用の防護服を着た巣山が、レンの袖をめくる。
「とりあえず、レンにはこれと、これ。」
 沖がそれを見せた瞬間、レンの表情が変わる。
「ナイフ…ずいぶん長い。」
 刃渡り40pはあるだろうそれは、意外にも軽かった。
「うん。前回レンに渡しておいたナイフはかなりダメージくらっちゃってるから。そのくらいの長さがあれば、もしもの場合でも爆発とかから少しは逃げられるから。」
「う…ん。」
 しっかりと頷く。
「レン、ボウガンとかの経験は?」
「あり ます。」
 ならこれ。と手渡される。これもかなり軽い。
「人に撃ったら逮捕だけど、虫相手だからオールオッケーだから。」
 除虫屋が人を殺すことは殆どない。殺す、という行為そのものに禁忌感がやはり否めないのだ。新たに発見された後から効いてくる幻覚作用のために仲間を殺傷した者が今一番新しい話題だ。……3年ほど前だが。
「う ん。」
 頷いて、手慣れた様子で分解する。
「矢 は?」
「10本。全部虫用。」
 矢の入った筒を貰い、なんか凄い格好をしている半分と、やや薄着の彼らを見やる。
「17:30。全員集合。」
 阿部がごついハンディ機に連絡を入れる。「目」が持つハンディ機は特殊回線(除虫屋専門回線なのでバグバンドと呼ばれている。警察とかと一緒でデジタルな上にお上から与えられた毎回違うスクランブルを与えられる為に傍受は難しい)を使っての連絡と報告専用で、自動録音となっている。除虫屋の武器士、情報屋がタッグを組み開発された、あらゆる虫にも溶かされず、踏まれても、衝撃を与えられても大丈夫というお墨付きのそれ。全滅した時にはそれが一番最初に回収される。別名「ブラックボックス」。
「これより除虫屋ニシウラ、目的地に向かい、「鷹の目」に従い通常除虫作業を開始する。」

さぁ、始まりだ。
戻る 次へ


ハンディ機はトランシーバーと同義語なんですが、
近距離用=トランシーバーというイメージが強いので、あえて無線機色が強いハンディ機としました。