2日経っても熱が下がらないレンに対して、「自分の体の治癒をするにはかなりの体力を消耗するらしい。」と言った阿部の言葉に全員が理解した。ちなみに阿部の目の下にはうっすら隈。書類の書き方やら本を読むやらでこの二日間殆ど徹夜したらしい。
 先ほど、阿部も見に行ったが後ろに(音もなく)控えていた栄口に「10秒ルール」と言われた。気配に敏感ですぐに目を覚ましてしまうとの事。「阿部が行ったら下がる熱もあがる」まで言われて怒鳴りつけようとしたら、やはり心配で後ろから来ていた花井に止められた。…故に寝ているレンを見ることは叶わなかった。
「なんだったっけなー。」
 田島が腕を組んでうんうん唸っている。昨日はモモカンもいて大にぎわいだったので、今日から思い出すことにしたらしい。
「おい、順繰りで考えてみろよ。」
 泉が仕方なしに田島の思考の整理を手伝い出す。
「昔はー、オレとハマ…なんだっけ?」
「浜田?」
「あ、そうそう、そいつ。そいつと遊んだんだよ。レンの家はでっかくて、庭もでっかくて。オレらは大抵抜け道使って遊びにいってたんだよなー。レンと初めて会った時はあいつ「よっつ」とか言ってたから。」
 うんうん。と頷く。
「それで?」
 泉が先を促す。
「その時にはもう、緑色の光は何度か見てたんだよ。確か。」
 周囲で耳をダンボにしていた全員がはっと田島を見る。
「それでかよ…」
 レンが誘拐されたのは6歳。義務教育に入る時に国の法律で「除虫屋」のテストが簡易的ながら行われる。その最初の集団検診前に誘拐されたということとなる。
「オレが小学校一緒に行って、どっかですりむいた時、レン、家に帰った時に治してくれたんだよな。」
「どうやって?」
 阿部の声。心なしか焦っている。
「それがおもいだせねーの。」
 右手で頭を抱えている。小さい頃の記憶を今更ながら掘り返すというのは結構難しい作業である。
「でもレンも6歳だろ?」
 ちちんぷいぷいとかじゃなかったのか?と巣山が言ってくる。
「違うんだよなー。レンもオレも本なんて読まなかったし。」

お前は簡単に想像がつく。

 誰しもが思った。
「レン、一人の時、なんだか色々歌ってた…か…?」
 泉が席を立つ。
「浜田に連絡とってみる。」
「え、お前、浜田の行方しってんのか?」
 田島が驚いたように泉を見る。
「あいつもオレと同じ学校で、除虫検査にひっかかったんだよ。除虫屋になる前にヘマして…今摩聖のSクラスにいる。」
 うわぁ、と沖が声をあげる。摩聖のSクラス、虫やその他のモノによって様々な特殊能力を持ってしまった者たちが通う世界でもそこにしかない特殊学級だ。
「摩聖のSクラスなら全寮制だろ?」
 西広が言う。数人が頷く。
「そうなんだよ。あいつが脱走してたら楽なんだけど…」
 それは無理だろ。と巣山が言う。世界の知識と不思議を結集して作られた学園は、自分たちが知らない「結界」とやらで様々な人々を守ったりしている。
「無理そうだね。」
 栄口の言葉に、はぁぁぁ、と溜息をついて泉が座り直す。
「レンがなぁ、ちょこっとでも歌ってくれれば思い出すカモ………カモ?」

カモ?
全員の視線が田島に集中。だが。

「栄口ー。今日の晩ご飯、カモナンバン食べたい!」

 全員がっくり。泉の怒りの鉄拳が落ちたことは当たり前のことである。

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私たぬきうどん食べたい〜