数分間探して探して…見つけて…栄口が見たものは……レン「だけ」だった。

 空撃士だから、ということで恐らくは自分に「緊急除虫作業」が入ったのだろう。レンはあくまで「護り手」であり、戦闘能力はないとされている。

「レン……」

 目の前にいるレン…いや、Windと言われる彼は、てらてらと反射するナイフを持ったままの彼は、

 無表情に。立って。いた。

 彼の周囲には爆発や溶けたと思われる虫が数匹、既に痕跡消去が始まっている。だが。

 自分たちが何故あの重ったるい防護服を着て「作業」せねばならないのか。理由は単純で、虫たちの体液がどんなものでも人に害なすものであるからだ。
 実際、レンの細っこい体には爆発した虫がつけたものであろう体液がしゅうしゅうと音をたて、彼の肉体を浸食しているし、普通の靴であるがため、足下にたまっている液体化した虫の死骸の体液でずぶずぶと溶け出している。
「レン、こっちへ!」
 返事がない。やや考えて。
「Wind…こっちへ。」
 はい、とレンは頷いて、そのままの姿で歩いてくる。…大きくよろける。が、自分も素手。触れられない。空気を操って、クッションのかわりにするのが関の山だ。
「痛い?痛いよね?」
 後悔というのは本当に後からくるものなんだ…と思いつつも、レンに駆け寄る。ああ、どうすればいいんだろう。
「大丈夫です。栄口くん。」
 機械的に話される言葉はレンのものではない。

 瞬間

 レンの体が緑色に覆われる。
「修復開始。オレにはこの能力があるため、首をはねられない限り、自分で治癒します。」
 だが、痛みは相当のものに近いらしい。既に他の除虫屋の者も来ているらしい。この姿を見せるのはまずい。
「レン、ごめんね!」
 栄口はビニール袋を放りだし、自分のシャツの裾にあった除虫屋バッチを地面へ落とし、空気でレンを包むと、宙に浮かす。
「…ご迷惑をおかけしま……」
 レンの顔が苦痛にゆがむ。地の利はこちらにある。遠回りになるが狭い小道や場合によって屋根も登って降りて「ニシウラ」に着く。空気解除を宣言すると、レンの右膝がかくんと地面についた。
「レン!」
「…大丈夫で…す。ひとり……で治せま …す ……から。」
 緑色の光は、レンの右足を中心に明滅している。どれだけの爆発をあびたのだろう?服もボロボロでその間に詰め物をするように緑色の光が光っている。
 よろり、とレンが立ち上がった。
「レン………あ。」
 ようやく自分が言わなければいけない言葉にたどり着く。
「Wind、レンに戻って。」
 命令、というより懇願。
「了解し…まし…た。」
 瞬間、レンの顔が一層の苦痛にゆがむ。
「レン!」
 丁度その時、わいわいと誰かが帰ってくる声。花井や田島ならそのまま結界を張ってレンを自室まで運ぶことができる。
「たーいや。」
 だが、開いたドアの向こうから最初に出てきたのは………
(こういう時には使えないヤツ…)

 …阿部だった。

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阿部参上。