5.緊急除虫作業


「ムッフフ〜ン♪」
 誰が聞いても良く分からない鼻歌が、隣を歩いているレンから流れてくる。

 ガッサガッサ

 レンの鼻歌にあわせて、スーパーのエコ袋も揺れる。どうやら結構ご機嫌らしい。

 客間から「自分の部屋」になって、生活必需品を買って、ようやく慣れだした頃だ。日差しが暑い。

 田島と一緒にスーパーへ行かせると3時間は帰ってこないので平日のこんな昼間の時間帯は栄口と一緒に買い物がてらの散歩が多い。一人で歩かせるのはまだ危険ということで、外に出るときは誰かが必ず付いていくのだが、レンはあまり一人では出たがらないので、自然誘う形となる。

 ピアッサーで開けた彼の耳には、万国共通の水色のティアドロップ型のピアスにしてはゴツいモノ。除虫屋マークと下に小さく「NISHIURA」と明記されている。反対側の耳には護り手のマークとレベルが入っている。ティアドロップ方の中に内蔵されているチップが、彼が誰で、その居場所とどこの除虫屋で、除虫屋でのポジションであるかがすぐに分かるようになっている。

ミハシ レン 14歳  スーパーでの買い物の帰りの道、除虫屋ニシウラ所属、護り手 レベル4

 除虫屋となるにはギリギリのセンである。ちなみにレンの場所場所(本人が嫌がって教えてくれない)には、「対虫用」にチカラが付与された武器が入っている。爆発物は阿部によって最初に放棄させられた(ちょっと不満げ?とか田島は思ってた)。それでも何がでてくるかちょっと怖い、実際レンに包丁を研いでもらったことのある(それはそれは綺麗に切れること切れること!)隣で歩いている栄口であった。


ピーーーーーー!


 いきなりその音にレンが飛びずさる。栄口のポケットからだ。
「緊急除虫作業だよ!」
 なんでも、一番多い金曜日以外でも、「虫」というのは少しながら発生するらしく、その駆除には一番近い除虫屋の人間があたるということになっているらしい。
「レンはまだレベルが低いからね。持たされてないんだよ。」
 ほら、と見せてくれたのは、なんか不格好なカタチの携帯?一昔前のポケベル?みたいなもので、それがピーピー言っている。
「場所は…うん。すぐだ。レンも行ってみる?」
  う ん。と頷いてみた。
「こういう時、阿部みたいな「目」が近くにいると、発見が楽なんだけどねー。」
 あははーと笑いながら、栄口は周囲を確認する。
「…Windになろ、う か?」
 そのほうが戦闘にはすぐれている。とレンは言う。阿部君から「モモカンとシガポと除虫屋ニシウラの仲間の言葉はオレと同じレベルにとらえろ。」と「命令」されている。
「うーん。お願いしようかな?」
 軽い気持ちで言った。言ってしまった。

 瞬間。

 レンが変わった。

 ぽふん、と今日の晩ご飯の材料が満載されたエコ袋が置かれる。

 レンのほわんほわんした空気がなくなり、きんっと鋼の刃のような空気が漂う。栄口の顔を瞬きもせずに見た表情は、いつもの彼とは全く違うものであった。

「Wind、これより排除作業に移ります。ターゲットは虫。虫の位置は不明。この周囲10メートルに栄口くん以外…今人の気配以外のものの気配が侵入。」

 ぴっと手を動かすと、どこからともなく肉厚なナイフがでてくる。その微妙な光から、西広と沖がチカラを付与したモノだと一目で分かる。
「確認し、虫と判断後、排除します。」
 すっとレン…Windの気配が消えた。

 その間、わずか10秒。

「えっえっえっ?」
 栄口が戸惑っている間に近くから爆発音と粘液質な音が入ってくる。
「レン!」
 嫌な予感に、買い物袋を置き去りに走り出す。

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ほえほえからシリアスへ。佳境へと向かいます。