庭から戻ってきて、お茶を飲んでいると、結界が揺れる。誰か帰ってきたらしい。
「ちーっす。」
「ただいま。」
「ただいま。」
 阿部と巣山と沖だ。今日は確か…第二外国語か。フランス語でたっぷりしごかれたか。
「おかえり。」と言いながら、お茶の用意をする。…緑茶でいいや。オレらの飲んでたでがらしで。
 びくびくしているレンにゆっくりと「もう一杯飲む?緑茶。」ときいてみる。
 ややあって、ふるふるふるふるふるふるふるふると首が振られる。あー、脅えちゃった。
「フラ語の宿題、どうする?」
 三人、ぼそぼそと相談しあっている。毎週この日の定例会議だ。早速巣山はノートと教科書みたいなのを取り出している。
「あの講師、読みが悪いと鼻先でフッと笑うんだよな…ムカツク。」
 いや、多分お前だけだろ、阿部。
つーかお前の発言にもたまにムカツク。
「あー、もう文字なのかなんだか分からないっ!誰か読んで〜!」
 と、コピーされた紙がはらりとレンの前に落ちる。んー、とちょっと小首を曲げた後
「…『フランス産のラベンダーは基本的に茎や葉を取り、花の部位からとりだす。その時、水蒸気でやるのだが、残った水にもラベンダーの効能が残り、フローラルウォーターとして取り扱われる…だがしかし…』」

 全員が動きを止める。忘れてた。レンは外国語が得意なんだ。

「レン。」
「な、ななんでしょう、あべさ…くん。」
 いきなりレンの前に紙とシャーペン置いて………
「訳したの、書いてくれ。」
「分かりました。あべ…くん。」
 レンはすらすらと書き出した。………あれ?
「英語?」
「それお前、皮肉か?」
 阿部、それは違うと思う。
「え……あ……あの…………………」
 ちょっとあって、レンは答えた。

 日本語、読み も書 きも できませ ん。

 またもや全員が凍り付く。

 その姿に泣き出したレンを(阿部以外の者が)なだめすかし、口述で訳してもらっているのを自分たちで書き取り、発音の練習をしている姿を見ながら、俺は夕食の支度。
 昨日はコロッケだったからなぁ。さっぱりめ。さっぱりめ…。

…………………うーん…材料………思い浮かばない。

 カレーにしてみよう。レン、辛いの平気かな?ちゃんとお子様カレーになるようにもしておいて、と。
「終わったら三人とも手伝え。今夜はカレーだ!」
 おおおお!と声があがる。レンがキョドる。なだめる。阿部の命令でまた綺麗な音楽のような発音が流れる。

 それをBGMに、ピーラーでニンジンの皮をむき出す。


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思うんだけど、改稿すると栄口くん、黒くなっていきません?何故でしょう。