洗濯物を全て干し、もとのところへと戻ると、レンはじっとテレビを見ていた。じぃぃっと見てた。じぃぃぃぃぃっと見てた。
「どう?面白い?」

びくぅっ!

 本当に飛び上がるレン、どうやら栄口に気づかないくらい集中していたらしい。

「え……あ あああの……」

 うろうろきょろきょろおどおどびくびく

 レン特有の行動が出てきたので、栄口は少しフォローを入れてみる。
「あの刑事さんやってる俳優さん、もともとは時代劇にいたんだよ?」
「へ?」

 口をぱくぱくして驚いてる。だが、何かあるようだ。
「どうしたの?レン?」
「この刑事さん…
はぐれて るの?

 
問題はそこかい!

「ま、まぁ、シリーズになってるから、これから見ていけば分かるよ。」
 デコに浮いた汗をそっと拭きながら、栄口は笑った。
家政婦はいつでも見ているの?とか聞かれそうだなー、とか思いつつ。


 スタッフロールが流れ、CMショッピングに入ると、栄口はレンに帽子を手渡した。
「ほら、庭を少し散歩してみよう?」
 きょとん、とした後、またあたふたきょどきょどとしだす。
「い いい の?」
「いいんだよ。」
 阿部だったらとっくにキレてるだろう。ああ、俺、もしかして保父さん?
「はい、帽子かぶって、庭いってみよー!」

 おー!と声あげると、ややあって「ぉー」と小さく返ってきた。

 さて、庭である。栄口がやっている家庭菜園から、田島が昔ばらまいてそのままにしていたら自然に繁殖してしまった朝顔のつるやらなにやらがざわわ、ざわわと生えている。そんなに広くもないが、それらのおかげで玄関左側の庭(?)は洗濯物が干せないくらいになってしまっている。何か悪いことをやったヤツがいたら、2つめの罰はこれにしよう。と心の底で決意しながら栄口はレンを案内する。
「もうすぐでアサガオのつるをどうにかしないとな。」
 なんとなく言ってみたら、レンがぎょっとした顔をしてこちらを見ている。
「え?」

 オレ、何か悪いこと言いました?

「ち、チョウセンアサガオ?」
 固有名詞の時はどもらないらしい。…としみじみと考えて、我に返る。
「いや、フツーのアサガオ。小学生がかならず夏になると日記をつけさせられるアレ。」
「しょうがくせ い……」
 あああ、今度は地雷を踏んだようです、オレ。
「でも、色々なこと知ってるから、すごいよ、レンは!」
 笑っておく。にっこり。
「そう…かな?」

 春から夏に移動する時期の太陽の中、小さく笑われた。そういえば、彼の笑い声は初めてかもしれない。
 小さな彼は、小さく、そしてフシギに笑った。

 ウヒ。


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いや、栄口ならフツーにチョウセンアサガオを育てていそうで実は怖かったり 笑