コロッケと大量のキャベツの千切り、コーンスープ、あと漬物数点とご飯。それが今日のメニュー。

 まず、夕食の席についたのは、栄口、田島、泉、花井、水谷、部屋へと戻っていてギリギリ間に合った沖と巣山と西広…そして、レン。不安そうにキョドキョドと見回していたので、栄口と田島の間の席へ座らせた。
「んじゃ、いただきます。」
「いただきまーす!」
「いただきます。」
 栄口を筆頭に、それぞれ口にしながら夕食にありつく。全員スピードは様々だが、田島のスピードは異様に速い。コロッケ半分で席を立ち、もうご飯のお代わり(彼のお茶碗はドンブリだ)に行っている。
「あれ?レン、食べないの?」
 困った顔をしているレンになんだなんだと視線が集まる。それに更に脅えるレン。
「あ!わかった!」
 丁度ご飯をてんこ盛りに盛った田島が大きな声をあげた。これは全員びっくりする。
 ふふふ~ん♪と持ってきたものは、スプーンとフォーク。
「レン、コロッケも見たことなかったんだもんな。全部食べられるもんだぞー。とりあえず食べてみろ。」
 レンの右手に、スプーンが握られた。
「う、うん。」
 どうやら田島の予測は当たっていたらしい。
「あ、レン、食べる前は「いただきます。」って言うんだぞ。食べ終わったら「ごちそうさま。」って言うんだぞ。」
 こくこくと頷き、「いただき ま す。」と言ってから、レンはそっと田島が持っているもの…ご飯をすくって、食べた。

 ももも もも

「レン、コロッケも食べてみろ。ご飯だけでも美味しいけど、おかずがあったほうが美味しいぞ!」
「う、うん。」
 栄口がすかさずコロッケを箸で分け、三橋のお茶碗の中へと入れる。

 ぱく。

 全員がなんか…こう、雛の餌付けを見ているような気分になった。

 ももも ももも…

 ややあって、レンの顔が不思議そうなそれになった。
「美味いか?」
「うまい?…色々な味があって……うん。うまい? よ。」
 よかったなー。

 全員がホッとした。

 その後、田島はドンブリ3杯食べ、レンは頑張って完食した。
「ごちそうさまでした。」
「ご…ごちそ う さまで した。」
 初めてのご飯は、レンはとっても気に入ったらしい。
 少しだけ、ビクビクとキョドキョドがなくなった…ように見えた。

「あー、まだ面倒なのが一人、帰ってきてないな。」
 花井がぽつりとこぼし、あちゃっと水谷が額を叩いた。
「なにやってんだ?」
「さぁ?」
 阿部だから、阿部だし、という言葉が口々に出る。


「俺がなんだって言うんだ?」

『うわぁぁぁぁ!』

 その場にいた全員がその声にのけぞり、三橋はしゃがみ込む。

 見ると、大魔神よろしく阿部隆也様がそこに立っていた。



 突っ立っている彼に、「そこに座れ。」と阿部はいつもの通り偉そうに言った。今までの様子を見てきた全員は、レンのビクビクが最高潮になるのではないか?と心配げなまなざしで見る。だが。

「それは「Wind」への「命令」ですか?それとも「レン」への「命令」ですか?」

 機械的な話し方。見るとレンの表情が一切消えている。今までオドオドキョドキョドしていたレンはどこにもいない。流石の阿部も驚いている。微動だにしない。するのは瞬きのみ。

 ややあって、レンは口を開く。

「Is it "an order" to "Wind?" Or is it "an order" to "Ren?"」

 今度こそぎょっと全員が目を剥いた。レンは変わらず、阿部をじっと見て、答えを待っている。

 またしばしの時間の後、口が開く。

「那个是到"Wind"的"命令"吗?或者是到"Ren"的"命令"吗?」

 巻舌も鮮やかな北京語である。こうなってくると田島の目がだんだんキラキラしてくる。泉に「次何語がでると思う?」と聞いて殴られている。

「Est-ce que c'est "un ordre" pour "Enrouler? " Ou est-ce que c'est "un ordre" à "Ren? "」

 うわー、フラ語ペラペラー、と花井と巣山たちがざわめく。単位に直結するものは耳に痛い。

「んじゃまず「Wind」としての命令とする。日本語を使え。」
「了解しました。」
「席に座れ。」
「了解しました。」
 そのまま近くの椅子に座る。
「失礼致します。初めてのマスターにはお名前を名乗ってもらうことにしております。前回のマスターはレンとして投薬睡眠している間に死亡したものとみて、現在マスターと呼んでいる方は一人もおりません。」
 機械。全くの、機械。
「…阿部。」
「阿部様ですね。了解致しました。これからWindはマスターを阿部様と認識し、指揮を仰ぎます。」

 どうぞご命令を。

 その言葉を聞いた阿部のほうが、違う意味で怖かった。と後に語る。キモかったと言ったのは栄口で、それを水谷がうんうんと頷いて、阿部にどつかれていた。




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やはり栄口くんは黒く、どつかれ役は水谷で。←私は水谷をどうみてるのでしょうか→多分ヘタレ?→でも阿倍のほうが→以下自問自答