探索メンバーが帰ってきて、持って帰ってきたのは聖なる気をぷんぷんさせたタマゴ一個と分かると、心配性で苦労性の神官長のアズサはどうしたもんかと頭を抱える。
「タマゴか……割るか砕くか非破壊検査か。」
「タカヤ…タマゴは建築物じゃない。」
 ユウトがさっとツッコミ。
「シンタロウとカズトシ曰く『これに関する文献はない』とのことだ。」
 タカヤが言う。テーブルの上にはたまご。
「これだけ聖なる気を発している…ということは、聖獣の卵という可能性も捨てがたい…が。連絡は全く受けてない。」
 ドラゴンをはじめとした聖獣が新たに誕生するとなったら、即刻ここではなく大神殿のほうへ報告をしなければならない。逆に大神殿のほうから「新たな聖獣がふ化するから探せ。」と命令を受ける。今回は花井たちの上司一人のみの命令だ。

「西の森に面白そうなモノが落ちてるみたい。探してみるといいよ!」

 それだけだった。

 面白そうなモノにしては少し物騒なモノではないか。
 アズサはそう思う他ないのだ。ああ、苦労人。


すって、はいて、そしてにっこり。

第2話 ふたりと名前とたまご


「じゃあ、一番ヒマそうなのにタマゴの育成は頼むか…」
「知の神官は今は無理だ。これから農作物の暦を作るのに忙しくなる。」
 既にもう戻ってくるなり昨年の暦と天気を考えてあーでもないこーでもないと始まっているのだ。
「じゃあユウトのほうか?」
「ユウイチロウとコウスケに任せるか。ショウジは村の自警団に武術を仕込んでいる最中だから。」
「決定だな。」
「…ユウイチロウに平気か?」
 早速心配性の神官長がうーんと唸る。
「そのためのコウスケだ。」
 副神官長で知の神官の長を務めるタカヤはにべもない。面倒事は武の神官のほうに押しつける。昔から変わらない。
「まぁ…あの二人なら悪いことはしないだろうしね。」
 ユウトもにっこりと笑う。テーブルの下でタカヤの足に蹴りを入れることは忘れない。ここがユウトの武の神官である所以だ。「ぐぉっ」とタカヤが呻くが無視。
「タマゴ入れはどうしようかな?カゴに毛布でも敷いてそこにおいとくのがいいかな?」
 早速タマゴを持って、ユウトが言う。
「あーもう、好きにしてくれ。」
 かなりの個性派の副神官長に精神を疲れさせながら、アズサはそう言った。
「了解。じゃあ毎日二人に報告させるよ。」
 その言葉を合図に三人は席を立つ。
 何も言わないタマゴは、ちんまりと白い殻を見せるだけだった。


 というわけで、二人でこのタマゴを孵化させるかどうにかしてみて。
 手渡されたタマゴは拾ってきた時よりも……、

「なぁ、コウスケ。」
「…言いたいことは分かってる。小さくなってるって言いたいんだろ?」
「おお。拾った時はもう少しでかかったよな?」
「そうだよな。…もしかしたらあの腹黒副神官コンビの気にあてられたか?」
「それ、言えてるかもな。」

 二人とも大笑い。

「とりあえず…と。」
「昼間は暖かいから窓の近くはいいな。そいつも暖かくて気持ちいいんじゃねえか?」
「そうだと思ってな。」

 さっそくコウスケが準備を始める。ちんまりタマゴはタオルにくるまれて、カゴに入った状態で日当たりの良い場所に置かれた。

「そいつ、とりあえず名前を何か決めておかないとなんか据わりが悪くて…。」
「ユウイチロウの同意見とは思わなかったけど…?」
「タマゴだからたまこ!」
「既に女子確定かよ!」
「んじゃタマ?」
「猫?」
「マゴ?」
「まごまごしそうだ。」
「たご。」
「言語かよそれ。」
「コユーメイシだから何でもありじゃねーの?今流行りの…」
「やめとけ。名前で苦しんでるヤツはマジ苦しんでるから。」
「んじゃあポーチ…スクランブル…めんたま…」
「料理名だろ。いい加減にしておかねーと、うずらの卵くらいになるぞ?」
「んじゃあタマタマ…」

 コウスケの後ろ回し蹴り炸裂!!

「その名前はお前なら言えるだろう。カズトシとかシンタロウとかショウジとか言えると思うか?その名前大声で。この風俗営業法違反男。」
「フーエーホーでいいんじゃねえの?」
「…風営法。カタカナと伸ばす音だけで言うとバカにしか聞こえない…いや、お前既にバカだからしゃあないな。」
「ならコウスケはどういう名前をつけるんだよ!」
「…キューちゃん?」
「中身九官鳥か?」
「ピーちゃん?」
「中身インコか?」
「三郎?」
「演歌界か?」
「………」
「………」

ふーーーーーーーー×2

「タマゴ、名前だけでも教えてくれないと、呼びたいんだけど呼べないんだよー。」
「タマゴに懇願しても出てこないと思うが?」
「分かんないぞー?もしかしたらとんでもないのが出てくるかもしんないぞー?」
「例えば?」
「……………人面犬。」
「古い!つか怖い!」
「とんでもないものじゃん。」
「いや、そういう意味のとんでもないじゃなくて…」
「あり大抵にドラゴンとかフェニックスとか出てくると思うか?」
「今の所何ともわかんねーな。」
「とりあえずタマゴ。名前を教えてくれよな。」
「そうだな。教えたら名前を呼ぶよ。」
「そうだよなー。名前があったら分かりやすいもんな。」
「ああ。」
「夢に出てきてもいいからなー。怖がらずにでてこいなー。たま。」
「だから猫じゃねーって!」
 それからもぎゃんぎゃんと名前を言い合い、結果的にカズトシが晩餐の祈りの時間を告げにくるまでその話し合いと蹴りあい、殴り合いは続いたのであった。


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