西の森はいきなりどん、と木々の塊で始まる。樹齢が若いものやら古いものまでごちゃまぜで、奥のほうには針葉樹林、手前のほうに広葉樹林が広がっている。
その広葉樹林のど真ん中をつっぱしっているのは…いわずもがな、ユウイチロウである。
「うーん………なんか感じるなー。」
走りながら鼻をひくひくさせる。何か勘づいたユウイチロウの癖である。
「よっく見知ってる感じ………そうだ。聖なる感じ…」
「ユーイッチロー!」
神官だろお前、というコウスケのツッコミが入らなかったのがおかしいくらいのユウイチロウの言葉に、フミキの声が重なる。
「おーなんだーくそれふとー。」
「…意味分かってないのにタカヤの真似しないでくれよぉ……」
とほーとフミキ。ユウイチロウ走る走る。鼻ひくひく。
「やっぱりあっち!」
ぐるん!と左にユウイチロウが方向転換!
「わ!え?ちょっと!」
宙に浮いてるフミキ。急なユウイチロウの方向転換についていけず
どこーーーーーーん!
「またやったなクソレフト。」
結構遠くのほうにいたメンバーにもそれは振動と音で聞こえ……
ショウジが頭を掻き、シンタロウが苦笑し、カズトシがまぁまぁとコウスケに言わせることになっていること。
フミキはまだ気づいていない。ああ、なんて可哀想なフミキ。同情は誰もしないという所は慣れているということで。
その間にもユウイチロウは走る、走る走る─────
フミキが失神している時、ユウイチロウの法術がどかーんとあがった。術を覚えてないのに技が出せるのはここいらでもユウイチロウだけだろう。
当然、後から来たコウスケたちはフミキの失神している場所に行かずにユウイチロウがいるであろう場所へと急ぐ。
「なー!ぽてちんとタマゴ!しかもなんかすんげーシンセーな気ー出してる!」
ざっかんざっかんと森を抜け出すと、丁度ぽっかりと開けた場所があり…
ユウイチロウの言った通り、そこにはニワトリのタマゴを2まわりくらい大きくしたタマゴがぽてんとある。それだけならいいのだが…
「…本当に聖なる気を…」
シンタロウが冷や汗をかく。こんな強い気にあてられずにひょこひょこしているユウイチロウが怖い。
「おーい、それ持ってこい!」
コウスケが情け容赦ない言葉を出す。両隣にいたシンタロウとショウジが「うへっ」と声をあげる。
「りょーかーい!ほいっと。」
落とさないようにさっと持ち上げると、ぱきぃん!という音がした。
「タマゴが結界?」
シンタロウが驚く。ショウジも目を見張るが、そんなことおかまいなしにユウイチロウはタマゴを持ったまま、コウスケの所に戻ってきた。
「お、さっきよかシンセーな気が薄くなってるけど、コイツのモンだな。」
ユウイチロウはニカーと笑うと
とりあえず振ってみる。ぶんぶん。
「わ。」
「バカ。」
「やめろって!」
「ダメなんか?」
『割れたらどうする!』
「割れたら明日の朝ご飯〜♪…ぐぇ」
見事にユウイチロウの頭にコウスケの投げた手袋が当たる。
「さっさと持ち帰る。んでもってアズサに報告。オレはタマゴには興味ねぇ!」
ずかずかとコウスケが元の道を引き返す。慌ててショウジが後を追うが、シンタロウはユウイチロウが来るまで待っている。
「不思議なタマゴだね。」
「おお。光にあてても…とりあえず無精卵じゃねーみたいだから何か入ってるみてーだな。」
「それは食べられないよ……多分。ユウイチロウ。」
「産まれるんかな?産まれるんなら早くでてこいよー。待ってるぞー!」
シンタロウと成り立っていない会話をしながら歩き出す。
「……何か忘れてないか?」
「うーん、オレもそれは思ったんだけど…とりあえずそっちのタマゴの保護のほうが先かな?」
「そーだよな。うん。」
全員が森を抜けた時、法術が打ち上がり、初めて全員が、『あ、フミキ忘れてた。』と異口同音に言った。
がんばれフミキ!まけるなフミキ!