ここんとこ「会社」が静かでさー。
田島が言った言葉に三橋はきょとんとなり、泉は思わず田島の頭をはたく。
「いってぇ!」
「とりあえず部外!それ第一級!」
「あ、そーか。」
田島は携帯を取り出すとぺぺぺと打ち出す。それを三橋に見せる。無論角度によると見られないシートは貼ってある。
会社というのは、オレと泉の隠語で、今現在ウイルスをばらまいているところ
うんうん、とうなずくと、ぴっと消去する。保存もしていないので、携帯すら情報は残らない。
「その会社がさー、急に静かになったんだよ。」
ももも、と再度食べだした三橋の手がぴたりと止まる。
「ば 場所、特定 し た?」
「とりあえずはな。」
ごちそうさま。と言いながらも泉が答える。この頃二人の帰りが遅かったのはそのせいか。
「そこの火壁がやっかいでなー。」
はぁ、と田島が息をつくが、「負けるもんかぁぁぁぁぁぁ!」と吠えたので、三橋はもう少しで残り少なくはなっていたが弁当を落としそうになった。
「そ それ… 部長 と か?」
『言ってない。』
見事にハモッた声に三橋は唖然とする。泉が「まぁ、まずは三橋、ご飯食べちまえ。」という助言があり、三橋は大急ぎで昼ごはんをやっつけた。
ぱたんとふたを閉じたところで「へ 平気 なの?」と聞いてみる。
「オレらそれが仕事だからなー。」
「確かに。」
田島の言葉にしぶしぶ泉も頷く。
「そ そこは…やめ ておいたほう が…」
「え?」
「三橋、知ってるの?」
思わず出てしまった言葉に、二人ががっぷり食いついてきた。しまった。
「う ん…」
あああ、いいえと答えられない自分にかなり嫌悪しながら三橋は思わず頷いてしまった。
「ま 前に噂で き きいたこと あ あるか ら。」
「そなのか?」
「う うん。」
「……三橋、目が泳いでる。」
ああああ、嘘がつける人間になりたかった…三橋はさらに自己嫌悪。
「三橋もゴーグル持ってるのか?」
「う ん。」
それは嘘ではない。火事の時もちゃんと持ち出した。システムもバックアップをとってあったので、すぐに使用することもできる。
「知らなかった…」
泉が唖然とした顔をする。え?と三橋が驚く。そういえば彼らは何も知らないのだ。
「なぁ、三橋…頼みがあるんだけど……」
「田島、それは無理。」
がしっ、と田島の頭を掴む。
「三橋、ヒマしてるならいいかなー?とか。」
「たーじーまー。オレらの朝・昼・晩の御飯つくってもらってるのにさらにドンはないだろ。」
「うーん。そか。ワリィ。三橋。」
「う ううん。それ は いいよ。」
三橋が時計を見る。む。55分。そのしぐさで二人も気付いたらしい。あわてて片付けに入る。
「よーっしゃ、ダッシュだ!」
田島は勢いよく三橋の車いすを掴むと、ダッシュで走り出す。
「ヒィィィィィィィィィ…」
「こらぁ!三橋が落ちたらどーすんだ!」
泉のどなり声が1階エントランスに響いた。