「あーあ、今日も巡回か。」
椅子にもたれかかりながら、泉がぼやく。
「しゃーねーじゃん。オレらの仕事って、緊急時に必要になってくんだから。」
珍しく田島がなだめ役に回っている。
「…お前何かヘン。」
泉も訝しげに田島を見る。
「だって見ろよ。」
ついつい、とディスプレイを指さす。自分のディスプレイを見ると。
「お。」
バットとミットとボールがそこに登場している。
「やった!今日は楽しくクルージングだ。」
田島は言って、色々端末を動かした後、ゴーグルをつける。泉も同様に。
瞬間、自分がいまいた地面が無くなった感触がする。ようこそ、3Dの世界…というか、バーチャルの世界へ。ネットの中を泳ぎ回ることのできる機械、それが「バーチャルネットゴーグル」。9課お得意の技である。
泉が「あまり投げるの得意じゃないんだよな。とかぶちぶち漏らしながら、ボールを握る。硬球の硬さ。
田島は昔から野球が得意で、とある事件がなかったら、間違いなくいい高校の野球部へ入部していただろう。
「いっくぞー!」
泉が振りかぶる。
「おっけー!」
投げた球は、田島のバットの真芯を捕らえる。
カキーン!
ボールは飛んでいく。どこまでも、どこまでも。
「追いかけるぞ!」
「おうよ!」
二人とも、ミットとバットを持ったまま、この暗くて広いネットの世界を走り出す。