それから3日、水谷の頭はオーバーフロー寸前までいった。何度も負荷はかかるし疲れた頭でそのまま自分が早く走れるかを考えてプログラムを考えないといけない。田島と泉のがちょっと見たかったけど、それをやると何か負けた気がして嫌だったので懸命にプログラムを作った。走らせてみるとバグだらけ……バグとりに必死になって、気が付いたら2日徹夜。できあがってさぁ走らせるという所で「今日はオレのパソコンのチェック入れるから、巡回は泉とな〜。」と田島様のお達しで、あの猛烈に大変な作業は明日に持ち越された。
「お前、良くついてこれたよ。」
バーチャルネットゴーグル内での姿は、自然自分のいつもの姿となる。そういうように設計されているのだ。出来るとしたら、せいぜい衣装を変えるだけ。しかもほんのちょっと。これはやはりネット犯罪をなくす為であり、自分たちには必要性のあまりない(見えない所にウォール張って、隙間から「作業」する)ため、そこまでの手入れは行っていない。行うとしても難解な上、プログラム一つミスしたら全てが壊れるように設計されている。
やはり急に壊れてはいすぐに買い換えますという代物ではない。水谷たちが使っているのはネットの間では一番高価なゴーグルのうちに数えられているものであり、それをいじるためのフリーウェアは色々と配布されているが、それもかなり行動が制限されるものだ。やはり本格的に使うならかなり手を入れないと使えない。
「初日の機転は、本当に驚かされた。あれ、結構やり慣れてるだろ。」
泉はさっとプログラムを動かして、一つの部屋を作る。ソファーとテーブルのみが置いてある、質素な部屋だ。泉が腰掛けたので、水谷も反対側に腰掛ける。
「あれは…まぁ、情報追いかけるためにしばしば…ね。」
あははと笑う。確かにその通りだからだ。
「で、今実は田島がお前のパソコンの中見てる。」
「え゛?」
自分も気づかずに?
「やっぱ気づかなかったか。気づいたらもう少しここにいられるか、と思ったんだけど。」
空中に現れたキーボードをばばば、と叩く。そしてペンを取り出してさらさらと書く。封筒に入れて、ぽいっと投げる。投げた封筒は空中で消えた。
「栄口と花井と阿部に言っておいた。阿部か花井の所にしろって。」
「阿部?花井?」
「ああ。花井はオレらが見つけた違法サイトの報告及びハッキングされてる所への忠告とか。阿部ン所はウイルスの解析とかワクチンとか作るところ。」
お前ならどっちも出来そうだしー。と泉が漏らすと、ぽん、と封筒が現れた。
「お、よし。田島から…田島も同感だって。レポートは既に送信済み。」
パキンと指を鳴らすと部屋が消える。思わずよろけたが立ち上がる。
「明日辞令が下りるとおもうから、今日が最後の巡回な。」
言うなり凄い速度で走り出す。
負けじと水谷も走り出そうとして…あ。と思い出す。
「泉!今日!」
「へ?」
「すんごいショーがあるんだよ!田島も一緒に!隠密で。」
「隠密で?」
「そそ。場所を変えてなかったら、すんごいモノが見られるから!」
「ほーぉ。」
泉はキーボードを叩いている。そのケーブルはどこかに消えている。が。
田島 今からオレも行くからなー!待ってろ!
空中に白い文字で田島からのメッセージが浮かび上がった。
「つまらなかったら、とんでもないところにとばすように栄口にいうぞ?」
泉が言うが、水谷はへらりと笑う。
「つまらないはずがないじゃない。サイッコーのギグさ☆」
泉と水谷は、色々と話しながら田島が降りてくるのを待った。